ハードウェア × ソフトウェア × ?
アップルは常々、ハードウェアとソフトウェアを中心に設計している点を強調する。これが同社の製品開発の手法であり、他社(ハードウェアとソフトウェア分離型)の開発に対してアドバンテージを取ることができる数少ない要素だと理解しているからだ。
今回も非常にふんだんにその要素を取り入れた進化がもたらされた。その代表格がDynamic Islandだ。
2017年登場のiPhone X以来、前面すべてを画面が覆うデザインを採用してきた。そのかわり、顔認証センサーとカメラを収める画面の切り欠き(ノッチ)ができてしまい、2021年のiPhone 13シリーズではそのサイズが小さくなった点をアピールした。
そして2022年のiPhone 14 Proファミリーでは、ノッチを画面端から独立させた「島」とする改善を行った。もちろんAndroidの世界では、iPhoneがノッチを搭載したころから、パンチホールやピル(薬のカプセル)の形状で画面の中に穴を空けてカメラを収める手法が当たり前のように用いられてきた。
そこでAppleがひと工夫したのが、Dynamic Islandだ。iOS 16で導入した割り込みの通知やライブ通知の領域として、有機的かつスムーズに心地よくアニメーションしながら伸縮する特別な領域の「デザイン」として昇華させた。
例えば音楽再生をしていてホーム画面に戻ると、黒い切り欠きが左右に拡がり、アルバムの画像と音楽再生中であることを表すアニメが表示される。電話がかかってくると、この領域がさらに縦に広がり、電話の主の名前と写真を表示し、応答するためのボタンが出てくる。
ノッチもハードウェアの欠点をデザイン的なアイデンティティと解釈していたが、今回のパンチホールも、ただ穴が開いているだけではなく、ユーザーとのインタラクションのための領域として実装したのだ。