中絶をめぐる最高裁判決を受け、米国で女性の有権者登録が急増

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米連邦最高裁判所は2022年6月24日、「ドブス対ジャクソン女性健康機構訴訟」において、これまで中絶の権利を認めてきた1973年の「ロー対ウェイド判決」を覆した。それを受けて、米国のいくつかの州では、新規有権者登録数において、女性が男性を大きくしのぐところが出てきている。

政治に関する調査会社ターゲット・スマート(Targetsmart)のトム・ボニアー(Tom Bonier)CEOが公開したデータによれば、8月中旬時点で、新たに登録した有権者のうち、女性の割合が男性を少なくとも10ポイント上回った州が9州にのぼった。

新規有権者登録が最も極端に女性に偏っている例がカンザス州だ。カンザス州では、8月2日に実施された住民投票で、人工妊娠中絶の権利を擁護する州憲法が維持された。

11月の中間選挙では、中絶をめぐるいくつかの住民投票が実施される見込みだが、カンザス州の住民投票は、6月24日の最高裁判決後に実施された最初のものだ。カンザス州の事例は、中絶の権利をめぐる問題が女性を動かし、有権者登録へ、さらには投票へと向かわせうることを示している。

新規有権者登録に占める女性の割合は、最高裁判決後に人工妊娠中絶が違法となったアイダホ、ウィスコンシン、ルイジアナの3州でも大きかった。この3州では、この件に関する住民投票は予定されていないものの、やはり女性の割合が大きかったペンシルベニア州では、2023年に、州憲法改正の是非を問う住民投票が実施される可能性がある。

ペンシルベニア州では、現時点ではまだ人工妊娠中絶は合法だが、共和党が優勢である議会と、民主党の知事のあいだで分裂状態にある。同州では、新たに登録した有権者のうち、女性の占める割合が男性を12ポイント上回った。女性の新規有権者は、ほぼすべての州で男性を上回ったが、これほど大きな差ではない。

ペンシルベニア州の政治状況からすると、人工妊娠中絶に関する法律は、賛否どちらでも膠着状態になると見られる。そのため、共和党が優勢である議会にとって、住民投票による州憲法改正は、中絶の規制を実現するためのひとつの手段になっている。だが、やはり共和党議員の主導で実施されたカンザス州の住民投票は、そうした発議が強い反発を受ける可能性を示している。
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翻訳=梅田智世/ガリレオ

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