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Session2
「社会課題解決装置としての海上建築の可能性」
出演者:N-ARK取締役/塩浦政也、取締役/永田宙郷
ゲスト:清水建設フロンティア開発室海洋開発部主査/吉田郁夫
モデレーター:Forbes JAPAN 執行役員 Web編集長/谷本有香
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Session2では、清水建設の設計本部で福祉や教育施設やホテルの設計を担当し、2008年から、海洋未来都市構想「グリーンフロート」や「オーシャンスパイラル」の設計及び事務局を手掛けた一級建築士の吉田郁夫さんをゲストに迎え、「社会課題解決装置としての海上建築の可能性」にスポットを当てた。
次世代リサーチセンター海洋未来都市グループ長を務め、現在、フロンティア開発室海洋開発部で活躍する吉田さんは、海上建築や海上都市を知り尽くしたプロフェッショナル。海抜平均1.5mで一足早く海面上昇の危機に陥る可能性のあるキリバス共和国を例にあげ、グリーンフロートで対処すべく、グリーンフロートを紹介した。
清水建設フロンティア開発室海洋開発部主査 吉田郁夫氏
「グリーンフロートとは、赤道直下の太平洋に浮かぶ海洋未来都市構想のことです。化石燃料使用ゼロで、空中都市に涼しく住め、養殖できる浅瀬も作り、5万人が住める都市を目指していますが、課題は、『陸とは違う形で、どうライフサイクルを保てるか?』。
水上建築が一番進んでいる国がオランダで、街の中に運河が流れ、運河の上にレストランがあります。船をベースにしたハウスボートに住むことから始まり、今では水上建築を量産する企業も存在しています。水辺に住むためには、法整備が必要ですが、オランダでは行政が主体となって法を整備してきました。その結果、水辺に住むことが人気になってきたのです」と吉田さん。
今年6月からは、モルディブでも深刻化する海面上昇対応のためのフローティング住宅建設が、スタート。日本では、横浜みなとみらいぷかり桟橋や、寺田倉庫が運営する水上レストラン「T.Y.HARBOR River Lounge」などが存在する。国連は「海上に浮かぶサステナブル都市機想」を本格的に検討し始めている。
吉田さん曰く「これまで、海の上に浮かべる利点を強くアピールしてこなかったと感じているので、これからは、陸以上の利便性を説明していきたいと考えています」と語る。そこで、問題になるのが、「海上都市の魅力」という点。海面上昇による危機感だけでは共感を得られないのが現状で、例えば、若者が新しいライフスタイルを実現する場や、高齢者が新しいコミュニティを求めて移住する、といったように魅力を感じられる都市を目指すことが課題となってくる。
海上建築を実現するキーワード:
『陸以上の利便性』
『誰がすむのか?』
『コミュニティ』
N-ARK取締役 塩浦政也氏