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Session4
「海上建築のソーシャルインパクトと評価」
出演者:N-ARK取締役/木下明、代表/田崎有城
ゲスト:フロネシス・パートナーズ代表取締役/白石智哉
モデレーター:Forbes JAPAN 執行役員 Web編集長/谷本有香
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Session4では、プライベート・エクイティ投資やインパクト投資を手掛けている、フロネシス・パートナーズ代表取締役の白石智哉さんをゲストに迎えて「海上建築のソーシャルインパクトと評価」についてセッションが行われた。白石さんは、ベンチャー・キャピタル投資やプライベート・エクイティ投資の経験から得られた、企業価値の評価や経営の知見を活かして環境や社会へのインパクトの最大化を目的にした投資活動も行っている。
左:フロネシス・パートナーズ代表取締役 白石智哉氏
「長期投資という観点からは、海上建築は気候変動対策といった環境面のインパクトと同時にソーシャル・インパクトも大きい事業であると思います。一般的に経済的価値は利益の資本効率(ROIC)などが代表的な指標ですが、ソーシャル・インパクトの指標とは、その事業の受益者は誰(Who)で、彼らに対してどのような成果 (Outcome)を、どのように(How)、どのくらいの期間(Depth)で実現するのか、というものです。
つまり『どのようにその人たちの豊かさ(wellbeing)を向上するのか』という観点でインパクトの指標を定め、それを測定し、経営管理の中核に置きます。これがIMM(Impact Measurement & Management)といわれるものです。日本企業でも昔から「三方よし」という考え方がありますが、それだけではフワッとしすぎていてインパクト経営とは呼べません。具体的な経営目標としてIMMを行うことが必要なのです。
N-ARKの場合、受益者は施設の利用者であったり、プロジェクトに参加する企業や行政という組織もあるでしょう。そのような多様な受益者に対して、それぞれの豊かさを定義付けていく。その場合の豊かさとは、経済資本に加えて文化資本や社会関係資本といったものになると思います。」との白石さんの見解からはじまった。
「長期投資家やスポンサーの役割は、事業戦略という良い脚本を一緒に作り、適切な配役や資金調達をして映画作品の制作を行う、まさにプロデュース業に似ています。資本主義という仕組みは経営資源を調達し事業を拡大・成長させる素晴らしい仕組みです。その仕組みを短期的な経済価値の増大に使わずに、文化資本や社会関係資本といった「豊かさ」の増大のために使っていくことが、結果として長期的な経済価値にも繋がるのだと思っています。」
ステークホルダーというと株主や顧客や取引先を一般的に想定するが、ソーシャル・インパクトにおいてはステークホルダー=受益者は、株主でもカスタマーでもなく、その事業が価値を届けたい人達に尽きるという。直近の利益を生み出しながらも、自分達の事業目的を最終的にどんな人達にどんな成果を届けたいかに設定しておけば、仮に事業で迷った時でも提供価値を振り返って考える事ができる。事業の一貫性が生まれ、ブランド価値の創出にもつながる。
海上建築は新たな価値提供の場と考えれば、このステークホルダー=受益者の設定こそが、事業の方向性を指し示す重要なKPIの土台になるのではないかと、白石さんは結んだ。
海上建築を実現するキーワード:
『どんなwellbeingを提供するのか?』
『ステークホルダーはだれか?』
『新たな価値提供』
N-ARK取締役 木下明氏