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2022.10.13 09:00

休みと遊びは区別すべき? 起業家のメンタルヘルスを考える|元アマゾン産業医の相談室 #9


無理な時は頑張らない


起業家は経営者として組織の頂上に立ち、ステークホルダーも多く、一般のビジネスパーソンと異なる心身の負担を感じています。仕事の管理してくれる上司が不在のため、全てが自分任せになりがちです。無理な時にも、自ら「無理です」と申し出ることが難しい環境であることは否めません。起業家が心身ともに健康であることが会社や従業員の利益につながります。

「自分がいないと会社が回らない」と無理を続けることは、メンタルヘルス不調のリスクを高める危険があります。自分が不調であるか否かの見極め、自分の限界をあらかじめ知っておくことが重要です。投資家がよき相談相手であることも多く、困った時に支えてくれる投資家の存在も大切です。

睡眠は量より質が大切


筆者は産業医としてビジネスパーソンの面接を行なっていますが、面接では努めて「睡眠の質」について質問をするようにしています。体調を崩してから、「あの時の自分は普通ではなかった」と振り返ることはできるのですが、その当時にはストレスによる心身の不調があっても、自分ではそれを認識できないことがあります。

とくに、体調を崩す過程で睡眠の質が低下することが、多くの人の間で見られます。布団に入っても目がさえて寝ることができない(入眠困難)、夜中に何回も目が覚める(中途覚醒)、朝早く目が覚めそれから寝られない(早朝覚醒)などが毎日の様に続く場合には、ストレスによる睡眠の変化と気づくことができます。

「5時間の睡眠」を確保


パフォーマンスを維持するためには5時間以上の睡眠が必要なことを示唆する米国の研究報告(2003年)があります。被験者を4つのグループ(睡眠時間3、5、7、9時間)に分け、7日間の作業効率の変化を調べました。7時間と9時間では作業効率の低下は緩やかですが、3時間では3日目から作業効率が急激に低下し、作業効率を維持するには5時間がギリギリでした。

すなわち週明け月曜日から3時間睡眠で頑張っていても、水曜日には作業効率は80%まで低下、日曜日には60%弱まで低下します。3時間睡眠で頑張って仕事をしても、作業効率を維持できるのはわずか2日間で、3日目からは急激に作業効率が低下してしまいます。このようにパフォーマンスを維持するためには、少なくとも5時間の睡眠が必要と考えられます。

睡眠を制限した場合の作業効率の変化


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文=鈴木英孝 編集=石井節子

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