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2022.10.13

休みと遊びは区別すべき? 起業家のメンタルヘルスを考える|元アマゾン産業医の相談室 #9

元アマゾン産業医の相談室 #9

前回第8回「「うつ」は非起業家の2倍? 起業家のメンタルヘルスを考える」では、「起業家の約5割はメンタルヘルス疾患を経験している」「うつ病は約2倍、ADHDは約6倍、アルコール依存は約3倍、双極性障害は11倍」「起業家の32%は、これまでに2つ以上のメンタルヘルス疾患に罹患している」といった衝撃的ともいえるデータを見てきました。

起業家にはメンタルヘルスのリスクも伴うことは容易に想像ができます。

連載第9回では、前回に続き、「起業家のメンタルヘルス」の話題を扱います。今回は、睡眠について、「せいいっぱい仕事し」、「とことん遊ぶ」ことについて、「遊ぶ」と「休む」の区別についてなどを考えてみたいと思います。


起業家のメンタルヘルスを支える


国内では行政が起業家を育成するプログラムを提供しながら、新規事業への参加を支援・強化するようになりました。米国ではベンチャー企業が新規雇用を生み出していることもあり、行政が起業家を支援することは、経済活動の底上げに対してもプラスの影響が期待できます。

多くの人が「起業」を身近に感じることができるとともに、非起業家に比べ、起業家の方がメンタルヘルス上の高いリスクを抱えており、起業家に対するメンタルヘルス支援の関心が高まっています。起業家の方々に知っていただきたいメンタルヘルスのポイントを紹介します。

他人の成功よりも失敗から学ぶ


無理を助長するようなカルチャーは、起業家のメンタルヘルス不調のリスクを高める可能性があります。

起業家の間では、「キラキラして発言力のある人」、「リスクをいとわない人」が注目されます。「スタートアップ時には寝食を忘れて働け、リスクをいとわず挑戦せよ」というメッセージも発信することがあります。

彼ら、彼女らの発言力や説得力から多くの教訓を学ぶことができますが、「サバイブ(生き残り)して成功している起業家」というバイアスもあるので、そのまま一般化することには慎重であるべきです。成功している起業家の影には、失敗により会社を潰してしまった数多くの起業家が存在し、成功だけでなく失敗体験にも目を向けることが望まれます。
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文=鈴木英孝 編集=石井節子

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