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2022.08.12

気候変動がパナマ運河と世界の海上貿易を脅かす

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パナマは国連の認証プロセスを遵守している。このプロセスでは、各国が所有する樹木について説明し、そのまま維持した場合にどれだけの二酸化炭素を吸収できるかを確認することが義務づけられている。熱帯雨林の国が他国や企業に炭素クレジットを売りたい場合には、パリ気候協定に基づくルールが存在する。パナマは、REDD+(レッドプラス)融資メカニズムのもと、1800万トンのCO2クレジット(2016年から2022年までの過去の実績に基づくクレジット)を販売する資格があるとしている。

CO2クレジットの販売で得た資金は、同国の熱帯雨林の保護と強化に役立てられる。センプリスによれば、クレジットは2023年に販売できるようになり、当初は2億5千万ドル(約337億円)が調達されるという。1年目以降は、毎年5000万ドル(約67億5000万円)から7000万ドル(約94億5000万円)の収入になる見込みだという。

また、パナマはこの資金を、森林破壊された土地の修復に留まらずエコツーリズム、生物多様性保護、科学研究など、あらゆる分野のグリーン雇用の創出に活用する予定だ。資金は透明性が高く、専門的に管理された信託に入ることになる。「何千もの新規雇用が期待できます」とセンプリスはいう。「私たちは、森林再生に注力できるように、地方に資金を供給しなければなりせん」

パナマの主要産業は、農業ビジネス、製造業、石油製品、化学製品、そしてパナマ運河とパナマシティの空港に関連した輸送業で、パナマシティは世界170都市と空路でつながれている。観光業も40億ドル(約5397億2000万円)の収益として貢献している。一方、銅などの鉱物が豊富なことから、鉱業とともに国際的な銀行業も盛んだ。非効率な農業部門が、国内の温室効果ガス排出の主な原因となっている。

パナマに地域本部を置く多国籍企業には、海運会社のマースク、プロクター&ギャンブル、シェブロン(CVX)、エクソンモービル(XOM)、BPがあり、これらはすべてカーボンニュートラルであることを宣言し、炭素クレジットを購入している。

他の熱帯雨林の大国が、木を生かし二酸化炭素を吸収することに焦点を当てた同様のコミットメントと犠牲を払わない限り、パナマの努力は世界的みて小さな影響にとどまるだろう。つまりアフリカ、オーストラリア、ブラジル、中国、インド、インドネシア、ロシアが森林伐採を止めなければならないということだ。

「森林は、地球規模の気候変動対策において、より大きな役割を果たす必要があります」とセンプリスはいう。「それが『パナマが森を守る理由』です。もし、他の場所で違法伐採があっても、見て見ぬふりをするわけにはいかないのです。それを放置すればパナマ運河が被害を受け、世界の海上交通の6%に悪影響がおよぶからです」

熱帯雨林はパナマの経済的健全性、すなわちパナマ運河を存続させる原動力として不可欠だ。気候変動はパナマにとどまらず、世界の脅威となっている。戦いは多面的だ。しかし、熱帯雨林の保護と気候変動ファイナンスへのアクセスを確保することが、成功への礎となるのだ。

翻訳=酒匂寛

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