同論文は、2020年の北大西洋ハリケーンシーズンのデータを分析したもので、ニューヨーク州立大学ストーニーブルック校やローレンス・バークレー国立研究所、ペンシルベニア州立大学の研究者らが執筆した。2020年のシーズンは最高記録を塗り替えた年となり、ハリケーンにより米全土で約370億ドル(約4兆8000億円)の損害が生じた。
この論文では、人間による影響がなかった場合の気象パターンのシミュレーションと実環境データを比較した。それによると2020年のハリケーンシーズンは、人間が引き起こした気候変動により、熱帯暴風雨以上の強さの嵐で極限の3時間降雨率が約10%増えていた。
同調査によると、2020年のシーズン中のハリケーンは、熱帯暴風雨の強さに達したか降雨量が99パーセンタイル以内だった他の嵐と比べて気候変動により受けた影響が大きく、ハリケーンの極限の3時間降雨率は約11%増えた。
極限の3日間累積雨量は、熱帯暴風雨以上の強さの嵐では約5%増え、ハリケーンでは約8%増えていた。研究者らは、北大西洋以外の海で発生する暴風雨でもおそらくこうした変化が生じるだろうと述べた。
海面温度は1901年以降、温室効果ガスの排出により10年ごとに約0.14度上昇しており、温かく湿気のある大気条件が作り出されている。研究者らによると、これがより強力なハリケーンをより頻繁に生んできた要因だ。
ネイチャー・コミュニケーションズの論文は、科学誌ネイチャーなどに掲載されたこれまでの研究を裏付けるものだ。こうした研究では、気候変動により豪雨が2~20%の間で増加する可能性があることが示されていた。
同論文の著者らによると、嵐を引き起こす気候・環境要因は多く存在し重複しているため、海水温の上昇がハリケーンやその他の嵐に与える影響を正確に測定することは難しい。しかし過去の研究では、地球温暖化と強力なハリケーンの間に強いつながりがあることが示唆されてきた。