ちなみにイーサリアムはその日常性故にVCをはじめとする投資家がかなり活発に活動しており、投機のイメージが既に色濃くついている。これに元Twitter共同創業者であるジャック・ドーシーは反発し、真の分散型webとして“web5”の開発を始めている。
彼はなんというかピュアな人で、web3はVCの所有物になってしまっており、VCの利益の源泉は後から参加する投資家の資金であり、それはほとんどポンジ・スキームのような詐欺であると批判している。しかしそれを否定するのは資本主義自体を頭ごなしに否定することで、実際に現実というのはもう少しニュアンスのある、ハイブリッドなものとして我々は捉えなければいけないと思う。
──インベストメントDAOのような、分散型の投資コミュニティが簡単に作れるスタートアップも登場している。この登場の背景は? 既存のVCへの批判もあるのか。
インベストメントDAOは、そもそもは投資をしたいという純粋な動機から生まれてきた。そこから派生して、現在は既存VCへの批判ともとれるような、文化財保護のためのNational Treasure DAO等が生まれ、実際に韓国で国宝を競り落として保護するといった活動も行われている。
アメリカも日本も、ベンチャー投資は投資家保護のため1億円以上資産がある人しかできないが、インベストDAOを用いればその制約をかいくぐることができる。例えば僕がメディアラボの所長をしていたとき、学生たちでインベストメントDAOを立ち上げた。そのような新しいweb3型の投資、新しいVCの形態が生まれてきているといえる。
アメリカでは既にそういった経済におけるweb3の歴史があるので、web3自体に投機のイメージがついている上、民主党はweb3反対派、共和党が賛成派、と政治ともすでに結びつきができてしまっている。対して日本はweb3に関して、国としてほぼまっさらに近い状態なので、僕のようにいい方向にもっていこうとする人たちが大きく声を上げればよりよいweb3を実現できるのではないかと期待している。
──著書では、web3で変わる社会的価値観について、「所有」よりも「Join(参加)」という言葉を使いたい、と述べられている。
Web1.0で「read(読む)」、Web2.0では「write(書く)」、そしてweb3で「own(所有)」が可能になったとよく言われるが、「own(所有)」よりも「join(参加)」と表現するのがふさわしいと考えている。
例えばNFTを買うと、とあるコミュニティのNFTを買ったという行動がブロックチェーンに記録され、誰からでも見えるようになる。NFTを買うという行為は非代替性のトークンを所有するというよりも、そのコミュニティに「参加」しているという一つの証を持つことであるといえる。
会社の進化の流れという観点からみても、web3が「株主、経営者、従業員」という構図を崩すことになる。DAOにおいてはDAOを作った人たちも、参加者たちも、トークンを持っている限り権利的に同等な存在となる。
あるDAOでトークンを購入すれば、そのプロジェクトへの投票権を得られて、会話にも参加できる。実際にプロジェクトに参加することもできるし、プロジェクトがうまくいけば配当がでたり、トークン自体の価値があがっていき、自分にメリットが返ってくる。