テクノロジー

2022.08.02 07:00

所有より参加を。伊藤穰一が語る「これからのお金・投資・会社」

写真=小田駿一

写真=小田駿一

6月15日に『テクノロジーが予測する未来 web3、メタバース、NFTで世界はこうなる』(SB新書)を上梓した元MITメディアラボ所長の伊藤穰一。昨年アメリカより帰国し、現在は千葉工業大学変革センター所長を務め、日本を拠点に活動。ポッドキャスト『JOI ITO 変革への道』では国内外のさまざまな人物と対談し、これからの日本を考え、どう変革していくのか、精力的に情報を発信している。

いま、web3の世界で起こっていること、そしてよりよい未来をつくっていくために必要なこととは。7月中旬に著者インタビューを行った。


──著書出版に至った経緯は。

日本に帰国したとき、web3(編集部注・伊藤氏はすべて小文字にすることでweb3の持つ非中央集権的な性格を表すことができると考えて著書の中で「web3」と表記しているため、ここでもその表記に準じている)のことを勉強したい人に対する適切な教材がないと感じた。日本語はもちろん英語圏にもないので、これは、書いてしまった方が早いと。

僕自身これまでたくさん集めてきた情報の整理のためにもよいと思った。今年3月に話が決まって、6月に出版。web3の知識がゼロの人でも、ある程度持っている人でも興味を持ってもらえるような内容になるように工夫した。結果的にとてもよい本になったと思う。

──6月8日に渋谷で開催されたTHE NEW CONTEXT CONFERENCEの基調講演では、ブロックチェーンのインパクトについて、古代メソポタミアの粘土板の会計記録を例にお話しされた。

古代メソポタミアの粘土板は「会計」の概念の誕生を示すものだが、ブロックチェーンはそれと同じくらいの大きなイノベーションだ。今、「お金」それ自体がどんどん進化していく分水嶺にある。「お金」は産業革命後、大量生産を主とする工業社会の中の単純化されたコーディネーションのためだけの道具になってしまっている。

例えば育児など目に見えない価値はGDPに換算されない。価値がないと考えられている人間の活動はたくさんある。おかげで、お金は「必要なものだけど嫌なもの」というイメージもついてしまっている。全部ブロックチェーンが解決するとは思わないが、お金の奥にある、お金だけでは換算できない複雑な人間の関係性も表現できると思っている。

約1000年前に中央集権型の大都市が生まれた。その後資本主義が広まったのが6〜700年前。分散されて株式市場ができ、資本家が仕組みに参加できるようになった。これからはさらに分散化されたプログラム型の人間関係の時代となる。

イーサリアムのホームページに、イーサリアムは「protocol for human coordination」であると書いてあるが、もともと複式簿記が会計のコーディネーションであったように、さらにもっと多くの社会や局面で人間のコーディネーションができるといい。
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文=岩坪文子、荒川未緒

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