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2022.07.16

マクロン大統領夫人が開発した紅茶「エリゼ宮で朝食を」は日本の食卓を賑わせるか!?

マクロン大統領夫妻(Photo by Jeff J Mitchell/Getty Images)

フランスのパリ8区に位置する大統領官邸のエリゼ宮。ハイブランドの店が軒を連ねるフォーブル・サントノレ通りにありながら、警備はきわめて厳重で、やや近寄りがたい雰囲気を醸し出している。

好景気に沸く18世紀初頭の1718年、建築家のアルマン=クロード・モレがエヴルー伯爵の邸宅として建設に着手、それ以来、3世紀余りにわたって同国の歴史を見守り続ける。

敷地面積は約7万8000平方メートルと東京ドームの同1.7倍の広さで、宮殿内には365の部屋があるという。いささか旧聞に属するが、フランスの作家、パトリス・ドゥ・モンカンが2013年に著した「Que vaut Paris?(パリの価値は?)」によると、エリゼ宮の不動産価格は約12億ユーロ。日本円で実に約1680億円に達する。ちなみに、同書によれば、エッフェル塔の価格は28億ユーロ、ルーヴル美術館は75億ユーロとなっている。

エリゼ宮は、第二共和制下の1848年に大統領のルイ・ナポレオン3世が住み始めて以来、同国の権力を象徴する場所となった。正式に大統領官邸として使用され始めたのは1873年からで、エリゼ宮の住人となった大統領は現在のエマニュエル・マクロンで23人目だ。

2018年からエリゼ宮公認商品を販売


そのエリゼ宮からお墨付きをもらったグッズがあるのをご存じだろうか。キーホルダー、バッグ、アクセサリー、傘、香水、食器、玩具などさまざまあり、フランス国旗の青、白、赤の3色を基調にした商品も少なくない。これらの「エリゼ宮−大統領官邸」という商標が刻印された商品は約300種類を数える。英国皇室の公式グッズと同じような位置付けといえるだろう。

エリゼ宮公認の商品販売がスタートしたのは2018年。パリ市内にある取り扱い店だけでなく、オンラインショップでも購入可能だ。お墨付きが得られるのはフランスで製造されたグッズに限られており、「メード・イン・フランス」商品の拡販を通じて地元産業の振興を図り、雇用の受け皿拡大などにつなげようという政府の戦略が背景にはある。

商品の在庫リスクなどはすべて製造・販売する企業側が負うことになっており、売り上げ全体の15%が大統領府に入る仕組みで、築300年を超えたエリゼ宮の修繕・維持費に充てられる。



公認商品の1つに紅茶の「クスミティー(KUSMI TEA)」とコラボレーションしたものがある。クスミティーは1867年にロシアのサンクトペテルブルグで産声を上げた。その後、ロシア革命が起こり、難を逃れた創業家一族がフランスで1917年に工房を立ち上げ製造を開始。現在はノルマンディー地方でつくられる紅茶として広く知られている。フランス国内にとどまらず、世界35カ国に店舗を展開する。

エリゼ宮の公認商品として提供されているのは「ティファニーで朝食を」ならぬ「エリゼ宮で朝食を」と名付けられた特別な紅茶だ。「トリコロールカラー」のデザインが施された缶のフタを開けると、茶葉に三色のフレーバーが散りばめられている。青はヤグルマギクの花びら、白はシトロネラ、赤はイチゴのかけらの香りが漂う。
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文=松崎泰弘

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