ロシアで事業継続をする外資系企業はESG投資からも取り残される

独流通大手メトロ(Photo by Jeremy Moeller/Getty Images)

ロシアから撤退するか、それともとどまるか。ウクライナ危機は企業に厳しい決断を迫っている。

米エール大学経営大学院によると、2月24日のロシアによるウクライナ侵攻以来、ロシアでの事業停止や縮小を表明した企業は3月22日時点で400社超。米ネットフリックス、アップル、ボーイング、英シェル、ドイツ銀行など世界有数の企業とともに、ブリヂストン、パナソニック、任天堂など海外展開に積極的な日本の会社も名を連ねる。

海外企業のロシア事業見直しで、歴史的に特別な意味を持つのが米マクドナルドとペプシコである。マクドナルドは1990年にモスクワへ初出店。開店初日には3万人が並んだとされる。その光景は「資本主義が競争相手に文化的な勝利を収めた証しだった」と報じられた。

現在はロシア全土に850店舗を展開していたが、一時休業を決めた。その決断までに時間を要したことで、ソーシャルメディア上では「ボイコット マクドナルド」のハッシュタグとともに批判的な声が上がっていた。

ペプシコもロシアでの飲料販売を停止。牛乳などの乳製品や粉ミルクなどの生活必需品の販売は継続する。

同社の「ペプシコーラ」をめぐっては逸話がある。1959年の「台所論争」だ。モスクワで開催された米国の産業博覧会会場に設営されたモデルハウスのキッチンで、当時の米国のニクソン副大統領と旧ソ連のフルシチョフ第一書記が資本主義と共産主義について激論を戦わせたことから、こう呼ばれる。

激しい論争の後、ニクソン副大統領がフルシチョフ第一書記を巧みにペプシコの出展ブースへ案内。その場でフルシチョフにペプシコーラが振る舞われた。メディアは「ペプシ」と書かれた紙コップを手に試飲するフルシチョフの姿を撮った写真を配信。それを機に、ソ連には「ペプシ」のブランド名が広がり、1972年にはライバルのコカ・コーラに先んじて現地生産を始めるに至った。

フランスの新聞「ラ・クロワ」の電子版は、同国の大学教授がある雑誌に記した言葉を引用し、「ペプシコーラは米国とソ連の人々の『同胞愛』の象徴になった」と伝えている。
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文=松崎泰弘

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