ビジネス

2022.07.10

消費者も生産者に 「当たり前の裏側を見る」マッチングサービス

報酬の食べ物を通して生産者と消費者がつながる


また、報酬が食べ物の場合、生産者を思い出すことに繋がったり、ゆるやかな余白のある関係性が構築でき、体験者からの反応も上々だという。

「私たちが一日3回食事を摂っているということに、大きな可能性を感じています。食糧廃棄など、一次産業の問題はそれだけ身近にある問題で、関わっていない人はいないと言ってもいい。一人でも多くの人がそこに気がついてくれれば、大きく変わると思います」


MOTTAIの拠点となる古民家シェアハウスを訪れた人の感想ノート。さまざまな気づきが書かれている

消費者が生産者に変わる


神奈川県のいちご農家・富田秋美氏は、ホストとして同マッチングサービスに登録している。ここに手伝いにくるのは、20〜30代の女性が多いという。

手伝いの内容は農作業全般。毎日9〜16時の時間で受け入れていて、報酬は夏はナス、冬はいちごとなっている。

繊細ないちごを扱う作業は、都度のレクチャーに神経を使う。それでも体験をサービスとして提供するのは、農業に関わる人を増やしたいという一心からだ。


いちご農家・富田秋美氏。現場では地味で地道な作業が続くが、笑顔を絶やさない。

「このままだと農業は無くなっちゃうから。農業をやる人が少なくなったら野菜の価値は上がると思うんですけど、そういう儲け方ではなくて、掛かる労力などをきちんと加味した適正な値段にしたいんです。そのためにも仲間をどんどん増やしたい。ギャルが農業やってたらキャッチーじゃないですか? それで農業に興味を持つ人が増えたら嬉しいです」と富田氏。

MOTTAIでは年内に、位置情報を利用して一次生産者とマッチングできるアプリのローンチを予定している。対象は首都圏だ。

「今、消費者と生産者は分断されているので、お互いがお互いに思いを馳せられるような関係性が必要だと思っていて。消費者が生産者に変わるきっかけはさまざまだと思うので、そこの種になるものを増やしていけたらなと思っています」

コロナ禍による分断は、それまですでに存在していた分断をも再認識させてくれた。それらの分断を乗り越える一助になるのは、人と人とのゆるやかな繋がりに違いない。


菅田 悠介(すがた・ゆうすけ)◎NPO法人MOTTAI代表理事。1995年生まれ福岡県出身。慶應義塾大学環境情報学部卒。わな猟師。インフラ企業社員。小田原市米神にて古民家シェアハウスを運営。鴨の解体から食料廃棄問題・食品ロスに興味を持ち始め、食べるを考えるきっかけづくりを始めるようになる。食べる、を考えるきっかけとしての鶏解体研修や、廃棄になりそうな食材を持ち寄る料理会「モッタイNight!!」や狩猟体験事業「罠オーナー制度」などを手がけている。

文=佐藤祥子

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