山の中には、植物だけでなく、もちろん動物もたくさんいる。レヴォでは、前店からのシグニチャーであるレヴォ鶏以外の肉類は、ジビエのみを使用している。
谷口氏が食肉加工免許をとり、レストランから5分のところにある古民家の蔵を改装して食肉加工場を作ったため、ハンターが撃ってきた鹿、イノシシ、熊などを、非常にいい状態でお客様に出せる。もちろん、害獣駆除にも貢献している。その一方で、車に轢かれたタヌキや穴熊も持ち帰り、ありがたく命をいただくという。
なんといっても驚いたのが、カエルも捕まえて食べるという話だ。いわゆる食用のウシガエルではく、標高の高い水のきれいな岩場にしか住まないというアズマヒキガエル。名前を聞くと一瞬引いてしまうが、なんでもふぐのような食感と上品な味だそうだ。これも村の人の知恵なのかと聞くと、谷口氏は笑いながら、僕が初めて試したのだという。
原始の人が、食べられるものと食べられないものを見分けて命を繋いできたように、食に対する本能が研ぎ澄まされてきているのかもしれない。
「料理のヒントも自然がくれるんです」と谷口氏。そして、自分たちが山の幸を食べて元気になっているように、食を通じて山と人間が共生しているということを、もっと伝えていくことが「それが山への恩返しである」と考えている。
「今はとにかく、小さな村で過ごすことがすごく心地良い。けれど、その魅力を伝え、新しい風、新しい人を入れていかないとダメだと思います。そうすることでまた面白い化学反応が始まっていくはずで、それこそが、私が率先してやらなければいけないこと。村の人たちからしたら、1年半しか住んでいない僕らはひよっこです。村の方たちからいろいろなことを教えてもらい、逆に僕らはレヴォで働いてもらうことで雇用を生み出す。自然を守り伝えながらその輪を広げていければいいなと願っています」
フランスの三ツ星レストランの多くがそうであるように、美食の力が村をおこし、地方創生をすることはまれではない。レヴォはそうした力を秘めているに違いない。