1000万人が使う日程調整ツール「Calendly」を生んだ黒人起業家

日程調整ツール「Calendly」の創業者のトペ・アウォトナ(Calendly提供)

日程調整ツール「Calendly」の創業者のトペ・アウォトナ(Tope Awotona)は、今から9年前にセールスの仕事を辞めて、同社を立ち上げた。自己資金の20万ドルで初めたビジネスは、今では1000万人のユーザーを抱える規模に成長し、顧客リストには配車サービスのリフトや家系図サービスのAncestry.com、家具メーカーのレイジーボーイ(La-Z-Boy)などの大手がそろっている。

Calendlyの売上は昨年1億ドルを突破し、前年の2倍の成長を記録した。

アトランタで創業したが、もはや物理的な拠点を持たない同社は、2016年から黒字を計上し、昨年は評価額30億ドルで3億5000万ドル(約450億円)の資金をOpenView Venture PartnersとIconiq Capitalから調達した。

フォーブスはアウォトナの保有資産を14億ドルと試算している。現在40歳の彼は、米国に2人しかいない黒人のテクノロジー系のビリオネアの1人だ。7年前にCalendlyの55万ドルのシードラウンドを主導したアトランタ・ベンチャーズ創業者のデビッド・カミングスは、アウォトナが「彼の世代で最も成功したアフリカ系アメリカ人のテクノロジー起業家になるだろう」と話す。

Calendlyは、競合のサービスよりも洗練された使い勝手と、フリーミアムのビジネスモデルで顧客の支持を拡大している。同社は現在、単なるスケジュール管理だけでなく、会議に必要な資料を招待状に追加する機能などを増強しようとしている。また、セールスフォースのような生産性向上ツールと連携する機能も持たせている。アウォトナは、すべてのビジネスのつながりの基盤となるCalendlyの市場規模が将来的に200億ドルに達すると考えている。

「私は常に、常識の枠にとらわれないことが大事だと考えてきた」と話すアウォトナは、ナイジェリアのラゴスの中流家庭に生まれた。父親は微生物学者であると同時に起業家で、母親は中央銀行に勤めていた。人口1500万人のラゴスは、経済的には活気があるが、危険な街でもある。アウォトナは12歳のとき、父親が車を奪われて銃で撃たれ、殺されるのを目撃した。「子供の頃から、父の無念を晴らしたいと思っていた」と彼は話す。

1996年、15歳の時に家族でアトランタに移住した。ジョージア大学で最初はコンピューターサイエンスを学んだが、その後は経営学部に移った。「私はプログラマになるには外向的すぎた」と話す彼は、卒業後にEMCなどの大手で、ソフトウェアのセールスの仕事に就いた。また、副業として出会い系サイトや園芸用品の販売サイトなどを立ち上げたがすべて失敗した。
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翻訳・編集=上田裕資

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