EVの急増はガソリン減少、原油減少、温室効果ガス減少ということでもある

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電気自動車(EV)の普及は、石油・ガソリン産業に当然のかたちで影響を与えている。内燃エンジンのためのガソリンが減ることは、ガソリンやディーゼル燃料へと精製される原油が減ることを意味している。

バイデン大統領のゴールは、2030年までに新車販売台数の半数をEVにすることだ。米国におけるエネルギー消費のゼロサム分析結果は、2030年までに原油需要が34%減少することを示唆している。もし供給が需要を追いかけるなら、2030年までに石油生産が34%減少することになる。すなわち石油生産の3分の1が10年以内になくなる。これは、米国内の石油生産に対する大きな打撃だ。

ただし注意すべきことがある。仮に米国における需要が34%減少しても、東南アジアなどの海外向け原油販売が需要減少に取って代わり、米国内の供給は維持されるかもしれない。

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世界の乗用車EV台数 IEA analysis based on country submissions, complemented by ACEA; CAAM; EAFO; EV Volumes; Marklines.

EVの販売状況


国際エネルギー機関(IEA)は世界の電気自動車販売のデータを発表した。グラフのオレンジは中国、青は欧州、緑は米国は表している。BEVはバッテリー電気自動車、PHEVはプラグイン・ハイブリッド車となる。

EVの販売台数は2021年までに急上昇しており、その傾向は2022年になっても続いている。世界では2022年第1四半期に200万台のEVが販売され、前年同期から75%増加した。2021年に販売されたEVは1650万台、2018年の500万台から大きく増加した。リードするのは中国で、2021年の販売台数は750万台、欧州がそれに次ぐ550万台、米国は250万台で第3位だった。数字にはバッテリーのみで動くEVのほかプラグイン・ハイブリッド社も含まれている。

2021年に全世界で販売された新車のうち、10%近くがEVだった。グラフには載っていないが、先頭を切っているのはノルウェーで、今や新車販売の60%がEVと、他の国々を大きく引き離している。米国はわずか4%だ。

ノルウェーの成功の秘密は政策にある。政府は奨励金を出し、EVの実質的価格をガソリン車以下にしている。最も人気が高いのは小型車の日産・リーフだ。一方、テスラ車が販売台数7万1000台(2020年前半のデータによる)でトップを走るアメリカの事情は異なる。同時期のシボレー・ボルトの販売台数は約8000台、日産・リーフは3000台だった。

中国でもEV乗用車は小型車が多い。また、EVはガソリン車より部品や工程がずっと単純なため、製造コストが小さい。それでもEV価格の中央値はガソリン車より10%高い。しかし、その差は他国よりずっと小さい。

IEAレポートによると、2021年に購入可能だったEV車種は、2015年の5倍以上で、2021年末には450車種に達した。米国では、ゼネラル・モーターズ(GM)が2025年までに30モデルのEVを発売すると発表し、フォードは2030年までに全世界売上の40%がバッテリーEVになると予測している。フォルクスワーゲンもEVに飛び込んだ。同社のベーシックなSUV(スポーツ用多目的車)であるID.4の価格は4万ドル(約540万円)、航続距離は400kmだ。さらに同社は全米に自社の充電ステーションを建設する計画も持っている。
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翻訳=高橋信夫

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