Voicy緒方憲太郎の偏愛漫画『沈黙の艦隊』|社長の偏愛漫画 #2

Voicy創業者の緒方憲太郎


日本のメディアって、在外邦人の取材が明確に少ないんですよ。なぜなら写真、映像が撮れないから。海外で活躍している日本人はいっぱいいるのに、メディアが取り上げないからみんな全然知らない。

でも「声」だったらできると思って、Voicyを始めました。NPOを立ち上げるつもりだったんですが、これはITでもできるな、と思って。そもそもVoicyは、音声のサービスじゃないんですよ。「人を届ける by voice」なんです(「声にのせて人を届ける」音声プラットフォーム)。

世界中どこにいても、どんなプラットフォームよりも手間をかけずに、その人の本人性とともに人生を届けられるサービスをつくりたかった。声だけで、編集もしない。BGMはアプリで決めて、聴きやすくする。世界で一番発信のハードルを下げ、人の魅力を直接届けられるようにする。人生のティップスを簡単に取得できるようにする。講演会やTEDを常時やっている状態を、Voicyで広めようと思いました。

栗俣:ところで、『沈黙の艦隊』以外で好きな作品を2つ挙げると?

緒方:『レベルE』(冨樫義博)ですね。会話のテンポと世界観がすごく面白いと思います。「このジャンルで好きなマンガは?」と問われたら1作ずつ挙げていくのですが、横断的に「好きなマンガは?」と言われると悩みます。

栗俣:やっぱり設定にかなり思い入れがある。

緒方:そうですね。設定系が好きですね。『響 〜小説家になる方法〜』(柳本光晴)はなんで途中で終わっちゃったんだろうな。

スポーツ漫画も好きです。一番ハマったのは『SLAM DUNK』(井上雄彦)。全然レベルが違いました。

栗俣:『レベルE』と『SLAM DUNK』の要素が合わさっている漫画が、実は『沈黙の艦隊』だと思います。『SLAM DUNK』の何がすごいかというと、表現方法です。

緒方:すごく短い時間なのに、何年もかけて描いていますからね。

栗俣:『沈黙の艦隊』も、2カ月間の出来事を8年かけて描いています。何も言葉を発しないコマに意味をもたせるのは、井上雄彦先生とかわぐちかいじ先生の共通点だと思います。

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『沈黙の艦隊』かわぐちかいじ モーニングKC 全32巻
米軍協力のもと、秘密裏に建造された日本初の原子力潜水艦は、日本政府の指揮管理下から離脱して独立国家「やまと」を宣言。海江田四郎艦長の指揮のもと、「やまと」は日本や米国、さらには国連に揺さぶりをかけて安全保障の常識を覆していく。1988〜96年連載。

緒方:
ひとつの事実に対して、いろいろな人が考える解釈がエンタテインメントになっていると思います。ひとつの事実を何通りにも解釈できる。

コミュニケーションがうまい『ミステリと言う勿れ』(田村由美)や『波よ聞いてくれ』(沙村広明)も好きです。『レベルE』もそうですが、劇中での登場人物たちの掛け合いが面白い。僕は漫才も大好きなんですが、漫才に近いようなことをやってくれると、すごくうれしくなります。

栗俣:『セトウツミ』(此元和津也)はお読みになりましたか?

緒方:まだ読んでないです。

栗俣:絶対お好きだと思いますよ!


おがた・けんたろう◎1980年、兵庫県生まれ。新日本監査法人を経て、Ernst & Young New York、トーマツベンチャーサポートにてスタートアップから大企業まで経営者のブレインとなるビジネスデザイナーとして支援。2016年に音声プラットフォームのVoicyを創業。著書に『ボイステック革命』。

くりまた・りきや◎TSUTAYA IPプロデュースユニット、コミック・アニメ・文庫プロデューサー。「TSUTAYA文庫」企画など販売企画からの売り伸ばしを得意とし、業界で“仕掛け番長”の異名をもつカリスマ書店員。毎週2回の漫画レビュー連載や漫画原案なども手がける。

聞き手=栗俣力也 文=荒井香織

この記事は 「Forbes JAPAN No.095 2022年月7号(2022/5/25発売)」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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