ビジネス

2022.06.16

独占!音楽業界を救った男 スポティファイCEOの告白

Spotify(スポティファイ) ダニエル・エクCEO


アップルと反トラスト法


アップルの課金システムに対してアプリ開発会社から反発の声が高まるなか、スポティファイは、欧州連合(EU)の欧州委員会のほか、米国でもエピック・ゲームズと一緒にアップルを独占禁止法違反で提訴している。ただスポティファイは辣腕法務顧問のオラシオ・グティエレスが、21年末にディズニーへ移籍。アップル追及の戦略がどう変わるか、注目される。



音楽を超えたプラットフォームへ


1. 人気ポッドキャスターと専属契約
スポティファイは認知度を高めるべく、固定オーディエンス(聴衆)を抱える人気ポッドキャスターと独占契約を結んだ。恋愛やセックスをテーマにした人気番組「コール・ハー・ダディ」をもつアレックス・クーパーとは6000万ドルで、格闘からコメディ、文化、科学、政治まで幅広い分野のゲストと対談する「ザ・ジョー・ローガン・エクスペリエンス」を主催するジョー・ローガン(写真)とは1億ドルで契約している。ただ後者は、陰謀論やワクチン懐疑論を取り上げることもあり、近年一部の利用者から反発を招いている。

2. 人気ポッドキャスト制作会社を買収
ネットフリックスが自社コンテンツを制作しているように、スポティファイも同じ戦略を取っている。19年には制作会社「ギムレット・メディア」を1億9400万ドルで、翌20年には、人気スポーツアナリストのビル・シモンズが立ち上げた制作会社「ザ・リンガー」を1億9000万ドルで買収。高品質の番組を量産することで、聴衆の囲い込みを図っている。だが、自社コンテンツ制作に関するスポティファイの戦略が明確ではなく、制作側が戸惑っているとの報道も。配信と制作の性質の違いをどう乗り越えるかが、課題になりそうだ。

3. ポッドキャスト制作ツールの買収
スポティファイでは、音楽配信代行サービスなどを介して楽曲を配信することが可能だが、ポッドキャストでもそうした環境を整備しようとしている。2019年には、スマホ一つでポッドキャスト番組の録音・編集・配信・分析が無料でできるサービス「Anchor(アンカー)」を買収し、翌20年には、広告配信プラットフォームの「Megaphone(メガフォン)」も買収。これにより、クリエイターはデータを活用しながらワンストップでポッドキャストを作ることができる。スポティファイも利用者を増やしつつ、広告収入を得ることも可能だ。


Spotify◎2006年創業、スウェーデン発の音楽ストリーミング(配信)企業。共同創業者は、ダニエル・エクとマーティン・ローレンツォン。欧州を中心に人気が高まり、11年には米国へ進出。現在は、音楽配信のほか、ポッドキャストの制作・制作支援・配信も手がけるなど、音声領域を中心に事業を拡大している。

Daniel Ek ダニエル・エク◎音楽配信企業スポティファイの共同創業者兼CEO。5歳の時にギターとコモドール20を両親からもらって以来、音楽とプログラミングに夢中に。スウェーデン王立工科大学へ進学するが、8週間で中途退学。23歳のときにスポティファイを立ち上げた。16歳でグーグルへの入社を志望も「学士号が必要」と断られた経験をもつ。

文=スティーブン・ベルトーニ 写真=グエリン・ブラスク 翻訳=木村理恵

この記事は 「Forbes JAPAN No.092 2022年月4号(2022/2/25発売)」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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