五色塚古墳への訪問者が183パーセント増。神戸市が制作したアニメMVの意外な効用

アニメMV「ワンダリズム きみを呼ぶ声」の1シーン、主人公の「なつしま」(左)

2020年の春に始まったコロナ禍だが、このところ休日になると、街なかに賑わいが戻りつつある。都道府県をまたいだ移動への制約がなくなったことで、全国各地で観光客を呼び込もうとする動きも復活しはじめた。

とはいえ実際には、一部の自治体や観光事業者の間では、この動きを予測して、その時期が来たら一気に観光プロモーションを仕掛けようと、水面下で着々と準備を進めてきた。

そのような例の1つとして紹介したいのが、神戸市と東宝の自社アニメレーベル「TOHO animation」が共同制作をしたミュージックビデオ(MV)「ワンダリズム きみを呼ぶ声」だ。3月末に公開されたこのMVは、若者好みの軽快な楽曲にSFファンタジーのアニメ映像を組み合わせている。



そして、このMVが舞台としているのが、神戸市垂水区にある全長194メートルの前方後円墳「五色塚古墳」なのだ。

古墳への訪問者が183パーセント増加


MVというのは、楽曲が表現している世界を映像化したものだが、2010年頃までは販売するCDの宣伝のためにつくられてきたので、「プロモーションビデオ(PV)」と呼ばれていた。

ところが、YouTubeなどの動画サイトで音楽を聴く人が飛躍的に増大すると、大量のコンテンツがあふれるなかで埋もれないようにと、芸術性が高くインパクトのある映像が楽曲に合わせて制作されるようになってきた。宣伝媒体としてではなく、あくまで「本編」としてつくられるので、「ミュージックビデオ(MV)」と呼ばれるようになったのだ。

今回の古墳を舞台にしたMVは、ユーチューブで視聴できるだけでなく、大型連休には神戸市内に2つあるシネコン「OSシネマズ」の18ある全てのスクリーンで、映画が始まる前の幕間にも上映された。それだけでなく、山陽電鉄や山陽バス、地元のカフェや温浴施設などとコラボしたプロモーションなども行っている。


神戸ハーバーランドにあるOSシネマズでの特設展示

その結果、MVの舞台となっている五色塚古墳への大型連休中の訪問者が、コロナ禍前の2019年と比べて183パーセントと大きく増加したのだ。
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文=多名部重則

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地域と観光が面白くなる新局面

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