五色塚古墳への訪問者が183パーセント増。神戸市が制作したアニメMVの意外な効用

アニメMV「ワンダリズム きみを呼ぶ声」の1シーン、主人公の「なつしま」(左)


HOWL BE QUIETが新曲を書き下ろし


そして、神戸市と東宝は、アニメでMVの制作を決断。原案・コンセプトデザインには「しの」、アニメーション制作には「グレンズそう」と、2人の若きアニメーターに白羽の矢を立てたのだ。

こうして誕生したのが、次のような魅力あふれるSFファンタジーだった。

遠い未来。かつての文明は失われ、すべては海のなかへと消えてしまった世界。人々は船を繋ぎ合わせた巨大な浮島で船上生活を送っていた。船上生活をする主人公「なつしま」は、ある日、突然、空から落ちてきた不思議な石を見つける。この石に「何か」を感じた「なつしま」は、導かれるように、海へと飛び出した……。

しかもこの物語は、舞台となっている五色塚古墳の表面に200万個以上置かれていた葺石がきっかけとなって、地球上で離ればなれになっていた人々や動物たちが再会を果たしていくという奇想天外なものだった。

楽曲は、若者から圧倒的に支持されている神奈川県出身の4人組バンド「HOWL BE QUIET」が、新曲の「Wonderism」を書き下ろした。作詞と作曲を担当した竹縄航太は、アニメーターの「しの」が描いた「再会」という主題に深い共感を覚えたという。竹縄が語る。


HOWL BE QUIETの竹縄航太

「この2年間は、コロナ禍のなかでライブが無くなり、リスナーとの繋がりを断たれてしまったように感じた時期でもあった。それでも届けたい、繋がりたいというありのままの想いを、そのまま曲に乗せようと思いながらつくっていきました」

前出のTOHOマーケティングの山口は、「SNS上ではこのMVを見て五色塚古墳に行ったという投稿も増えています。また、MVの存在を知った地元の方からも協力したいという話もきています」と話す。

若者をターゲットに、歴史遺産をアニメMVの形で発信するというこの思い切った手法、国内の自治体ではあまり先例のない取組みではあるが、ひょっとすると地方創生や観光PRの新しい手法と呼ばれるようになるのではないだろうか。

連載:地方発イノベーションの秘訣
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文=多名部重則

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地域と観光が面白くなる新局面

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