ビジネス

2022.05.19

これがアダストリアの「本気」 水戸からカーボンニュートラル実現へ

3月にアドアーリンク代表取締役に就任した福田泰己


行くこと自体に価値が感じられる店舗とは?


オフストアがまず目指すのは、売れないまま焼却処分となる商品をなくすこと。在庫問題には、これまでにもアダストリアグループ全体で取り組んできた。「ファッションロスゼロ」を掲げ、リサイクル、リユースなどを実施してきたのだ。

売れ残った商品の在庫をアウトレット価格で販売するだけでなく、「黒染め」で新しい商品に蘇らせる循環型のファッションブランド「FROMSTOCK(フロムストック)」も展開している。


「FROMSTOCK」の店舗の様子

こうした経験を踏まえて、オフストアでは、販売期間を終了した商品やサンプル品を販売している。商品はアダストリアのあらゆるブランドから寄せられ、メンズ、レディース、キッズ、さらには雑貨と幅広いラインナップが揃う。



「ただ在庫を安く売るということはやりたくなかった。店舗を構える以上、お客さまがサステナビリティやサーキュラーエコノミーを体感できるような仕掛けをつくり、そこに来ること自体に価値が感じられるようにしたいと考えました」

その思いは、内装にも現れている。オープンに際して新たな設備や什器を揃えるのではなく、前に入っていたテナントのものを再利用し、空間全体でサステナビリティを表現した。

店では、リメイクや再利用など、アップサイクルに関する体験ができるワークショップも開催する。例えば第一弾として2月に行ったワークショップでは、廃棄されてしまう革のハギレを使った小物入れ作りを企画。親子連れや若者など幅広い世代が、ものづくりを通してアップサイクルを学んだ。


ワークショップの様子

「水戸」にこだわった理由


オープンから2カ月。オフストアの売上は想定を上回る水準だ。福田は、反響が得られた背景には、出店場所がアダストリアの創業地・水戸であるということも寄与していると考えている。

「我々は水戸で70年近い歴史を築いてきました。“地域とともに成長する”を弊社のCSRの重点テーマとし、芸術館や体育館のネーミングライツの獲得や、スポーツチームへの協賛など、水戸を軸とした様々な取り組みを行ってきました。その結果、水戸では多くの人が当社を認知してくださっていて、愛情を持って迎えてくださっています」

そこで今回、顧客参加型の店舗を目指すにあたって、出店場所に都心でなく、水戸を選んだ。全国への店舗展開は検討中の段階だが、水戸で一定の手応えが感じられたことから、店舗を拡大する余地はあると考えている。
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文=三ツ井香菜 取材・編集=田中友梨 撮影=山田大輔

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