はじめにお伝えすると、リジェネラティブとは新しい概念であり、明確な共通の定義はありません。リサイクルやアップサイクルと何が違うの? と聞かれると、線引きが難しい用語です。
日本語に訳すと、「再生」や「回生」。「あるステージで当初の役割を終えたものが、次のステージで再び何かの役に立つこと」という意味を含んでいます。
なぜ今「リジェネラティブ」なのか
これまで掲げられてきた「サステナビリティ」は、「これ以上環境を悪くしないためにはどうすればよいか」という考えを前提にした概念です。地球への環境負荷をスローダウンさせますが、地球に「良い影響」を与えるわけではありません。
そこで、欧米では「サステナビリティを実現するだけでは不十分である」という考え方が出てくるようになりました。「どうすればもっと環境が良くなるのか」という考えに基づいた、ポジティブなアクションが求められているのです。それこそが、リジェネラティブな姿勢です。
2020年には、ウォルマートが「サステナビリティを超えて、リジェネラティブを実現する」と宣言しています。同社はリジェネラティブについて、「オペレーションを脱炭素化し、プロダクトチェーンにおける廃棄物をなくすことである」と定義しています。
ヨーロッパを中心に、廃棄物による環境への影響を最小限に、つまり、企業が「循環型」のビジネスを築き上げることが重要になっているのです。
海外で進むリジェネラティブアクション
抑えるためのアクションも進んでいます。特に、1990年代初めに提唱された拡大生産者責任(Extended Producer Responsibility:EPR)を、政策に取り入れる動きが加速しています。
これは、ブランドやメーカーなどの「生産者」に、製品の使用後の処分を含む「製品ライフサイクル」全体に責任を持つことを求める考え方です。日本でも、2014年に容器包装リサイクル法や家電リサイクル法の制定、自動車リサイクル法などの見直しを通して広がりました。
また、こうした政府の規制に頼らず、新しいテクノロジーで循環型ビジネスを実現しようとする動きも出てきています。例えば、英エジンバラ大学の研究グループは、プラスチック廃棄物をバニリン(バニラフレーバー)に変換する実験に成功しました。
大腸菌を使った化学反応によってPET(ポリエチレンテレフタレート)を分解し、PET由来の分子であるテレフタル酸をバニリンに変換する技術です。バニリンは食品や化粧品のほか、除草剤、消泡剤、洗浄剤などに幅広く使用されているので、今後企業への導入が期待されています。