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2021.12.24

2022年、注目すべきキーワードは「リジェネラティブ」

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最近、欧米を中心に、サステナビリティ(持続可能性)の実現に取り組んできた企業の間でよく使われるようになった言葉があります。「リジェネラティブ(Regenerative)」。これは2022年、日本にもトレンドワードとして上陸するのではないでしょうか。

はじめにお伝えすると、リジェネラティブとは新しい概念であり、明確な共通の定義はありません。リサイクルやアップサイクルと何が違うの? と聞かれると、線引きが難しい用語です。

日本語に訳すと、「再生」や「回生」。「あるステージで当初の役割を終えたものが、次のステージで再び何かの役に立つこと」という意味を含んでいます。

なぜ今「リジェネラティブ」なのか


これまで掲げられてきた「サステナビリティ」は、「これ以上環境を悪くしないためにはどうすればよいか」という考えを前提にした概念です。地球への環境負荷をスローダウンさせますが、地球に「良い影響」を与えるわけではありません。

そこで、欧米では「サステナビリティを実現するだけでは不十分である」という考え方が出てくるようになりました。「どうすればもっと環境が良くなるのか」という考えに基づいた、ポジティブなアクションが求められているのです。それこそが、リジェネラティブな姿勢です。

2020年には、ウォルマートが「サステナビリティを超えて、リジェネラティブを実現する」と宣言しています。同社はリジェネラティブについて、「オペレーションを脱炭素化し、プロダクトチェーンにおける廃棄物をなくすことである」と定義しています。

ヨーロッパを中心に、廃棄物による環境への影響を最小限に、つまり、企業が「循環型」のビジネスを築き上げることが重要になっているのです。

海外で進むリジェネラティブアクション


抑えるためのアクションも進んでいます。特に、1990年代初めに提唱された拡大生産者責任(Extended Producer Responsibility:EPR)を、政策に取り入れる動きが加速しています。

これは、ブランドやメーカーなどの「生産者」に、製品の使用後の処分を含む「製品ライフサイクル」全体に責任を持つことを求める考え方です。日本でも、2014年に容器包装リサイクル法や家電リサイクル法の制定、自動車リサイクル法などの見直しを通して広がりました。

また、こうした政府の規制に頼らず、新しいテクノロジーで循環型ビジネスを実現しようとする動きも出てきています。例えば、英エジンバラ大学の研究グループは、プラスチック廃棄物をバニリン(バニラフレーバー)に変換する実験に成功しました。

大腸菌を使った化学反応によってPET(ポリエチレンテレフタレート)を分解し、PET由来の分子であるテレフタル酸をバニリンに変換する技術です。バニリンは食品や化粧品のほか、除草剤、消泡剤、洗浄剤などに幅広く使用されているので、今後企業への導入が期待されています。
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文=加藤順也 編集=田中友梨

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