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2021.12.24

2022年、注目すべきキーワードは「リジェネラティブ」

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IDの活用でライフサイクルを証明


これまでに述べたリジェネラティブなアクションを企業が推進していくには、「透明性」と「信用」が必要になります。

循環サイクルが進めば進むほど、「どのような原料が使われたのか」「どこでどのように作られたのか」「どのように運ばれてきたのか」「どのように回収されればよいのか」といった、商品のライフサイクルを証明しなければならないからです。

また同時に、消費者に対してその取り組みを発信し、それによって消費者から“リジェネラティブなアクションのパートナー”として、選ばれることも重要です。では企業はどのように伝えていけばいいのでしょうか。

先のカップゼロやアディダスの事例から得られるヒントは、IDを活用する方法です。一つひとつの商品にIDを付与し、来歴を記録するのです。この方法では、IDを読み取るだけで原料の安全性や不法労働排除の証明といった生産段階の情報から、廃棄物の再利用や脱炭素に関する取り組み状況についての情報まで、共有することができます。

消費者は自分が手にとった商品に関する情報を知ることで、自分の選択が地球に対してポジティブな影響を及ぼすことができるのだ、と理解することができます。そして引き続きその商品やサービスを選択することで、自身がリジェネラティブな経済の一員になることができるのです。こうした企業と消費者の“共創・協業”の姿こそ、小売業界が目指すべき未来です。

環境に配慮した商品選択の促進も


最後になりますが、「消費者に選択肢を与える」という意味で、小売業が持つ責任は非常に大きいものです。したがって消費者のリジェネラティブに関する意識を変えられるような取り組みが求められています。

例えば、コンビニやスーパーで惣菜を買うときに、ラベルのカロリー表示を見て商品を選択することは、一般的になっています。今後、「環境に配慮した商品選択も大事である」という価値観が根付けば、カーボンフットプリント(原材料調達から廃棄・リサイクルに至るまでのライフサイクル全体を通して排出される温室効果ガスの排出量をCO2に換算したもの)などが表記されたラベルを見て、商品を選ぶ日がくるでしょう。

リジェネラティブはまだ新しい概念であり、実現が難しいと感じる方も多いかもしれませんが、企業と消費者が二人三脚で歩み始めれば決して到達不可能な場所ではないのです。


加藤順也◎Avery Dennison Smartrac Japan マネージングディレクター。LVMHグループ、Kurt Salmon US を経て2011年にAvery Dennisonに入社、2019年4月から現職。小売業や消費財メーカーへのコンサルティングやソリューション開発が専門。Avery Dennisonにおいて、マーケット開拓やRFID導入プロジェクトをリードし、日本支社の成長を牽引。上智大学卒。UCバークレーHaasビジネススクール DLAP修了。

参考資料:「リジェネラティブな小売経済」(Avery Dennison、2021年12月)

文=加藤順也 編集=田中友梨

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