同社の代表取締役社長兼CTOを務める小椋一宏氏に、起業家の素養や成長事業の創り方などについて、DIMENSIONビジネスプロデューサーの中山航介が聞いた(全3話中3話)
第一話:「仮説の99%は間違い」 起業家が事業選定で大事にすべきこと
第二話:5年に花開く、「テクノロジーの種」の見つけ方
危機のときこそ、常に正直であれ
──未上場時の資金調達において、これまで工夫されてきたことがあればお聞かせください。
1回目の資金調達をした当時はまさに「ネットバブル」。毎日のように「◯億円投資させてください」と電話がかかってくるような時代でした。
普通は投資家とベンチャーの間で牽制関係がうまく働きます。会社側が自分たちの価値をアピールするのに対し、投資家側が冷静に見極めて判断しますよね。
しかし当時のバブル期は、どの会社も超ハイバリューエーションで簡単に資金調達できてしまうような未成熟な時代でした。
ただ、一度でも実態以上に価値を膨らませて資金調達をしてしまうと、永遠にそれを続けなくてはいけなくなります。
それがわかっていたので、どうやったら「バブル」に乗らずに、自分たちの適正価値を理解してくれる投資家が見つかるか。自分たちを大きく見せすぎないことに苦慮していましたね。
──直近も“カネ余り”と言われ、少しバブル気味です。
当時を振り返り、良かったと思う点は、常に「正直」でいること。
経営危機に陥ったときでも、口先だけで新たな価値を創り出すのではなく、正直に危機であることを投資家に話し、理解してもらえるようにコミュニケーションしてきました。
その「正直」さが、結果的にネットバブルが崩壊した後でも生き残ることができた要因なのかなと思っています。
自ら「青い果実を食べる」
──ネットバブルを乗り越えた方法は。
当時は私も20代前半で、大失敗を繰り返しながら世の中の濁流に飲み込まれ、運よく生き残ったというのが実際のところです。
「利益は時価総額と関係がない!」と言われていた時代でしたので、私はそれを素直に受け入れて利益度外視の事業拡大を続けていました。しかし突然バブルがはじけて「利益は大切!」となった(笑)。
利益を出すにはコストを下げるしかありませんので、拡大路線から一転し、オフィスを畳んだり、社員にお願いして辞めてもらったりと、事業縮小するしか選択肢がない状況でした。