──2007年にはリーマンショックも起こりました。
リーマンショックの時はネットバブル期のように、会社の評価ルールがいきなり変わるわけではなかった。そもそも商品の需要がなくなってしまったんです。ネットバブルとは危機の性質が異なっていたように思います。
リーマンショックが起きてから我々のBtoB領域に到達するまでには、1年くらいのタイムラグがありました。そのため、コスト削減策に関してはネットバブルの危機を参考にしながら実行することができました。
ただ、会社に2度の経営危機をもたらしてしまい、経営者としては本当に悔しい出来事でした。
外部環境の変化がある度に、後手後手で対応しているようでは、とてもじゃないけど理念である「テクノロジーの解放」は実現できない。自ら変化を先取りしなければと考え、まだ未知数だったクラウドサービスを開発し始めたのがこの頃のことです。
──2度の経営危機を経て、HENNGE(へんげ)の価値源泉が生まれたのですね。
お客様に先駆けて自分たちが変化を先取りすること。それによって「失敗を100回すること」。失敗を通してExpertise(専門的な技術)をまず自分たちが身につけること。
これが我々の価値の根本です。
我々はそのことを “EAT UNRIPE FRUITS AND MAKE MISTAKES EARLY”(自ら青い果実を食べて、たくさんおなかを壊す)と表現しています。
食べられるもの、料理したら美味しいかもしれないもの、毒を抜いたら食べられるかもしれないもの。すべて自ら食べることで整理し、その情報をお客様に伝えることで信頼感を得るのが我々のやり方なのです。
「テクノロジーの種」を見つけるために、自分たちがまず先んじてお客様にこの先、5年10年ぐらいで起こりそうな事を全て試す。自ら“変化”し続けることが、ひいては「テクノロジーの解放」につながると信じています。
ダイバーシティをコアに組織をつくる
──失敗を許容する文化をどのようにして社内に浸透させているのでしょうか。
コアなエンジンになるのが「ダイバーシティ」だと考えています。
新しいことに挑戦し続ける、失敗し続けるために必要なことは、みんながちょっとずつ違うことをし続けること。横並び型の組織では新しいことや意味ある失敗は生まれません。
我々の場合、コアな価値観である「テクノロジーの解放」という経営理念をはじめとした、大きな方向性は共有しているものの、細かい手段はどんな方法でも良いと考えています。
組織がダイバース(多様)だと、違うことが当たり前。食べるものも言葉も労働観も違うので、結果的に変化に寛容で、チャレンジする人を応援する文化が生まれます。誰かが毎日挑戦しては失敗して、会社全体も変化し続けるサイクルが作られるのです。
この「ダイバーシティ」がコアエンジンとして機能すると発見してからは、ひたすらダイバーシティを推進する方向で組織作りをしています。社名をHENNGE(変化)に変えたのも、その文化がコアであることを浸透させるための手段なのです。
──どのようにしてダイバーシティがコアだと発見した?
創業時から失敗を許容する文化を大切にしてきたつもりではありましたが、海外のメンバーを受け入れ(現在では2割程度が海外出身)始めて、実は自分たちが一様な会社だったと気づいた側面があります。
いまもまだ多様性ある会社になりきれているとは思いませんが、ダイバーシティが必ず未来を切り開く力になると信じています。