世界の坂茂が設計。名古屋のエグゼクティブが新社屋にサウナを作った理由

名古屋の企業「タマディック」の新社屋最上階にあるサウナ

「平日は毎朝ウェルビー(名古屋にある名サウナ)に、週末はテントサウナを持って滝のあるキャンプ場を廻っている“サウナ狂”がいるらしい」

そんな噂を知人から聞いたのは数年前だっただろうか。僕も週5〜6回はサウナに通うそこそこのヘビーサウナーで、そのサウナ狂に実際に会うまでに、そこまで時間はかからなかった。ほどなくして、新宿・歌舞伎町のビルのループトップで営業していたテントサウナで直接紹介してもらう機会があった。

このサウナ狂の名は、森實敏彦。創業60年を超える航空・輸送関連のエンジニアリング企業「タマディック」の社長で、売上高は三桁億、1000人を超える従業員の企業を率いるビジネスエグゼクティブだ。

そのときに、彼が「名古屋の丸の内に坂茂の設計で自社ビルを建築中」で、なんと最上階にサウナまで作っているという話を聞いた。

オフィス最上階にサウナを


森實氏がサウナにはまったきっかけは、2015年に読んだタナカカツキさんのマンガ『サ道〜マンガで読むサウナ道〜』だった。「宇宙と一体となる“ととのう”」サウナってどんなものなんだろうと興味を持ち、実際行ってみたところ完全にハマってしまったのだという。

それから数年後、社内で自社ビル建設の計画が持ちあがる。

設計を坂氏に依頼したのは、「フランスのメスにある、パリのポンピドゥー・センターの分館『ポンピドゥー・センター・メス』、世界初の木造ビルとして話題になったスイスのメディア企業『タメディア』の自社ビル、同じくスイスで世界最大級の木造構造建築物と知られる『スウォッチ・オメガ』の本社ビルなど、坂茂の木造の建物が好き」だったからだと言う。


パリのポンピドゥー・センターの分館「ポンピドゥー・センター・メス」

設計に数年、建築に数年と、5年以上をかけた自社ビルプロジェクト。どうせ建てるなら最上階にサウナを設置しようというアイデアはごく自然に湧いてきたそうだ。

坂氏に相談にいったときにも、「名古屋の中心部の自社ビルというだけではそこまでの興味をもってもらなかったかもしれず、『最上階にサウナを作りたいんですよね』と話した瞬間に身を乗り出してきてくれた気がする」と振り返る。
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文・写真=山本憲資

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