サステナビリティを体感できる、真庭市の「バイオマスツアー」とは

バイオマスツアー(真庭バイオマス発電所見学)の様子 / 真庭観光局提供


2. 地域資源の最大活用


地域資源活用は全国各地で掲げられているが、真庭市はその典型的な成功例といっても良いかもしれない。

市内で木材のサプライチェーンが完結できることは先に述べたが、本流である木材業から発生する副産物(端材など)を余すところなく使い切る。これが成功事例の一つとなり、真庭里海米や木片コンクリート、液肥など、他の産業や場面に展開しているようにみえる。

その活用方法も「カスケード利用」が基本となっているようだ。マテリアル利用なのかエネルギー利用なのかを判別し、利用価値の高い順と利用用途に適した活用方法が採用されている。

真庭市の事例は、完結した木材サプライチェーンを市内に有する点などにおいて、丸ごと他地域へ横展開できるものではないのかもしれない。それでもこの中山間地域が示す「資源活用」は、地域の循環性を高める必要性と社会の要請が高まっている今、ある種の「型」を示しているのかもしれない。

3. 豊かな自然が市民の誇りを醸成


真庭市では「真庭ライフスタイル」の発信に取り組んでいる。

“多彩な真庭の豊かな生活「真庭ライフスタイル」とは、地域資源を生かした生活のことを指す。

都会ほどの稼ぎはないが、家族との充実したくらしがあり、地域のつとめをはたす中で自分は一人ではないことを幸せと思う生き方。それを真庭ライフスタイルと名付け、標榜していきたい。その第1歩は、まず、身の周りの地域資源を見直していきたい。そこには、稼ぎがあり、くらしがあり、つとめがある。”(出典:真庭市 副市長 吉永忠洋氏発表資料

地域資源は自然資本に根付くものであり、自然豊かな真庭それ自体が市民の誇りにつながっている。そんな想いが込められているに違いない。この要素は、先述した「2010年の真庭人の1日」にふんだんに見られる。丸太棒の復活やGREENable HIRUZENでも採用されている茅葺き屋根など、豊かな自然資本を産業につなげることが市民の誇りともなる。

ちなみに2021年の国連ハイレベルフォーラムでは、自発的国家レビューのなかで真庭市が紹介されている。これは都市部ではなく地方が循環型の取り組みを実施することでSDGs達成にも貢献しうることを海外に示した形で、真庭市民の誇りを醸成することにつながっている。

「地域の方々が持たれている想いが続いていることが、真庭市のバイオマスの取り組みが進んできた背景にあるのではないかと思います」と森田さんは締めくくる。

【参考】真庭観光局
【参考】GREENable HIRUZEN



※この記事は、2022年4月にリリースされたCircular Economy Hubからの転載です。

文=那須清和

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