ツアー立ち上げにあたり意識したことについて、真庭観光局の森脇さんは次のように説明する。
「『顔の見える産業観光』を意識してツアーを企画運営しています。技術を見せるのではなく、誰がどういう思いで実施しているのか。点としての施設だけではなく、市内でストーリーがつながるように地域全体を見せることを目的にしています。」ツアーとしての「商品販売」という観点ではなく、「観光地域づくり」が核となってきたのだ。
一方で、課題もあったという。「当時、バイオマスはあまり知られていなかったため、(バイオマスで)人を呼ぶのは考えられないという声が多くあり、地元の方の理解を得ることに苦労したと聞いています」と森脇さんは語る。
その状況が一転したのが2009年。その年に第14回新エネ大賞優秀普及啓発活動部門「経済産業大臣賞」を受賞したことで、地元でもツアーの認知が進んだ。
海外からの参加があるほどツアーは順調に発展していった。その間真庭市内でも先述した「真庭バイオマス集積基地」(2009年4年)「真庭バイオマス発電」(2013年2月)の新施設ができるなど、参加者にとっては訪問する度に新しい施設や取り組みが生まれているため、リピート訪問にもつながったという。
真庭観光局 事業部 森脇由恵さん
地域内連携としての「バイオマスツアー真庭」
視察を受け入れる企業の反応はどうだろうか。受け入れ側にとって、視察者を受け入れるには相応の負担がかかるのは確かだ。
「ツアー化することで、企業もボランティアで受け入れることがなくなったので、社内の理解も得やすくなったようです。もっというと、ツアー客がその企業に就職したり、ツアー客と視察先のマッチング事例も出てきたりしているのです」と真庭市役所の森田さんは説明する。
真庭観光局の中村さんは付け加える。「市内の企業に就職した新入社員や市役所職員もツアーに参加しています。そうすることで、新入社員の時から地域の資源を把握することにつながります。市内の他の企業を視察することで、(将来的に)それらの企業との連携が図れる基盤ができることがこの取り組みの特徴ですね」
真庭観光局次長 中村政三さん