「産業観光」から「真庭魅力発信」へ
真庭観光局は、バイオマス関連施設や取り組みを視察する、いわゆる「産業観光」を起点に、真庭市内の地域資源の魅力を発信する役割を担う。
中村さんによると、産業観光後にリピーターとして休暇で真庭市を訪れる人も少なくないという。
「視察ツアーを通してバイオマスを視察し、その後たとえば蒜山高原にプライベートで再度訪れるという流れも見受けられます。『また訪問したい』と思ってもらえるように、産業観光ツアーに観光地も入れていることも成果の理由になっているかもしれません。ガイドさんにも地域の魅力やストーリーを話してもらうことなど、いろいろな方策を組み合わせて、もう一度来たい、もう一度あの人に会いたいと思ってもらうことを目指しています」
「実は、キャンプ企画・紅葉企画・萱刈体験やお寺ツアーなどの新規の企画も、産業観光から出てきているものなのです」と中村さんは付け加える。「産業観光」から「真庭魅力発信」への流れを作ることを象徴する話だ。
雪の中にそびえ立つGREENable HIRUZEN のCLTパビリオン。愛称は「風の葉」
そんななか、観光へのさらなる追い風となるランドマークが誕生した。2021年7月に蒜山高原にサステナビリティを体感できる場所としてオープンしたGREENable HIRUZENだ。GREENable HIRUZENの建物の一つである真庭産CLTでできたパビリオンは東京の晴海に建設、その後「里帰り」(移築)された。
一連の過程は、都会と地方を結ぶことと、木材を解体し再建築できる「モジュール設計」の可能性を象徴している。オープンから半年弱でのべ10万人以上が訪れているという。このランドマークは、北に位置する蒜山地域から市内南部へ誘導する役割も果たすようだ。
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「民間主導」を象徴する観光地域づくりマネージャー
「観光地域づくりマネージャー」も、真庭市の文化を象徴する取り組みだ。
観光地域づくりマネージャーとは、真庭地域(真庭市・新庄村)でさまざまな事業や地域活動に携わり、それぞれの分野でリーダー・実行者として活動する人のことを指す。「“住んでよし、訪れてよし”の観光地域づくり」の実現に向けた各分野の横断的な取組を推進・具現化する人と真庭観光局独自で取り決めをしている。
真庭市では、酒蔵、遊園地、タクシー企業の社長やお寺の住職の配偶者など幅広い業種出身の市民が観光地域づくりマネージャーとして活動。各マネージャーの強みを活かしてそれぞれが実行したい事業を展開している。
これまで実施・計画されているものは、市内の「発酵」をテーマとした「まにわ発酵ツーリズム」・真庭市で活躍する人を紹介する「まにわ人図鑑」・9寺院が連携し各寺院を周遊する観光を展開する「真庭のお寺活用ネットワーク」、「真庭地域を食と人、心でむすぶ」ことを目的に活動する「おむすびプロジェクト」など、市民・民間ならではの視点を活かした活動となっている。
この制度を森田さんはこう評価する。
「真庭市は、9つの町村が合併しているのですが、各町村がもう少しつながりを深めるとさらに良いのにと思うことがあったのです。今の仕組みで少し前進したので、今後期待できることが生まれてくるのではないかと思っているところです。マネージャー同士が連携することで、自分の地域だけでなく他地域を知ることができ、新しい動きにつながっているのでは、と感じています」
「2022年は婚活プロジェクト、真庭の木工を振興する『まにわ木工’s(もっこうず)』など、半分冗談も交えながら業種も広げていきます。いろいろなアイデアが出すぎて困るくらい、楽しみながら進めています」と笑みがこぼれる。