サステナビリティを体感できる、真庭市の「バイオマスツアー」とは

バイオマスツアー(真庭バイオマス発電所見学)の様子 / 真庭観光局提供


真庭市の循環型地域づくりの3つの特徴


以上、ここまで真庭市全体の取り組みとサステナブルツーリズムについてご紹介してきた。ここからは、真庭市の取り組みからサーキュラーシティ移行に向けたヒントを探ってみたい。

今、特に欧州を中心に「サーキュラーシティ(循環型都市)」に向けた取り組みが活発化している。「循環型地域」という概念が以前から発展してきた日本でも、サーキュラーエコノミーの概念を取り入れた都市移行を目指す自治体も出てきている。こうした現状のなか、真庭市の取り組みから参考にできることは何だろうか。以下の3点を挙げる。

1. 「黒子役」として連携を促す市


真庭市のバイオマス産業都市としての起点は、地元の次世代を担う経営者が中心となった「21世紀の真庭塾」だ。地元の将来を真剣に考える有志による議論の結果が、いまの真庭市の地位を築いている。

一方で、官である市はその役割をどのように認識しているのだろうか。経済協力開発機構(OECD)によると、サーキュラーシティに向けた自治体の役割は、規制や能力開発などを行う「イネーブラー」、ステークホルダーを巻き込みコーディネートする「ファシリテーター」、戦略ビジョンを掲げる「プロモーター」と分類されている。


The Circular Economy in Cities and Regions Synthesis Report(OECD)を翻訳

「関係者が話し合い、合意を取る過程を経てそれぞれが密接になっていくのが真庭市の特徴ではないかと考えています。市内にはプロジェクトがいくつもあるので密接になる人が自ずと増えていくのです。そのハブになっているのが、市役所や観光局ではないでしょうか。やがては民間主導になるように、最初の基盤・条件を市で整備しています。市は『黒子役』といった感じでしょうか」と、森田さんは市の役割について認識する。

この言葉にも表れているように、上記の3つの役割でいう「ファシリテーター」としての役割を前面に出しているのが特徴といえそうだ。

さらに、今回の取材でも多くの関係者の名前が挙がり、それぞれがつながっていることが強調された。顔の見える連携は、サーキュラーシティ移行に向けたデジタル社会構築においても、何よりも強力な助けとなる。

「真庭市は、デジタル社会におけるデータの蓄積をアナログで実現できているように思います。それらが将来的にデータにも反映して情報発信につながると、今の国の目指す方向にも連動するのではないかと考えています。こういったアナログの基盤はデジタル移行への条件なのかもしれません」と森田さんは話す。

各ステークホルダーの連携を促す市だが、市における組織内連携はどうなっているのだろうか。サーキュラーエコノミー移行にあたり組織全体で進めることの難しさはあちらこちらで聞かれ、官民問わず課題となっている。同一組織内で連携を推進するには何が一番「手っ取り早い」のか。

森田さんが真っ先に挙げたのは「共通言語の重要性」である。真庭市の場合は「SDGs」だ。2018年に真庭市はSDGs未来都市に認定されて以来、SDGsを共通言語に掲げている。

今回お伺いした取り組みは、市役所内でも環境課、農業振興課、林業・バイオマス産業課、産業政策課など、多くの部署が関わる。市全体で進めるため、SDGsを連携の接着剤として機能させ、一部の部署だけが単独で施策を進めることのストッパーとなっているという。
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文=那須清和

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