山田:ヨーロッパ時代で印象に残っているハイエンド層のエピソードはありますか?
米田:二つ星のレストランにいた時、レオナルド・ダ・ヴィンチが設計したシャンボール城で、ランボルギーニの晩餐会を担当することがありました。厨房の機器を搬入し、オーケストラも入って。オーナーたちの車がお城の前にズラーっと並んで、日本にはない別世界でした。あとは、ソローニュの森で朝に狩猟をしたものを、その日にレストランに持ち込んでパーティーを開いたこともありました。
山田:そのような方々は、日本にどんなものを求めていると思いますか?
米田:ヨーロッパにはない、この国にある唯一性。基本的に「芸(能)」と「芸術」に分かれると思います。芸能は、元々完成度が高いものを純度を深めていったようなお茶とか能、宮大工、お寿司など。もう一方の芸術は、今ある何でも使って、ないものを表現していく建築家とか。
料理でも、突き詰める芸の分野と、まだ世の中にないコンセプトや料理方法で提供していく芸術に分かれるんじゃないかと思っています。こんなに料理が発達した国はないので、日本の食への関心はとても高いです。
山田:食はハイエンドトラベラーにとっても本当に強いキラーコンテンツですね。そうした方々は、ほかにどのようなものを求めているのでしょうか?
米田:基本的にワインが好きな方が多いですね。シンガポールでマクドナルドをチェーン展開した人が、顧客であり友人でもあるのですが、家に遊びに行くとまるで水族館。テーマパークみたいな感じでした。裏にはすごいワインが並んでいて、「好きなやつ飲んでいいよ」って言うので一番高いやつを取りました(笑)。
山田:家にプライベート美術館があったり、リゾートみたいだったり、ゴルフ場のように広いお庭があったり。ダイナミズムや規模では、やっぱり日本のライフスタイルはこじんまりしてしまいますが、海外にない魅力は、逆に小さいけれども精神性が詰まってるようなところでしょうか。
米田:そうでうね。ハイエンド層は、自分たちにない部分を「何だろう?」と考え、知的好奇心を持つ貪欲性がすごくあるなと感じます。「いい」というものもどれ位いいのかを知りたがる欲求が強い方が多いですね。
山田:アメリカや新興富裕層、IT系の方々はいかがですか?
米田:すごく“普通”で、来店されてもわからないです。だいたいの人がTシャツにジーンズにスニーカーというラフな装い。レストランの好みも、食へのこだわりも人それぞれですね。