ハイエンド・ブランディング・プロデューサーの山田理絵が、鎌倉にある「BLACK CUBE」にハイエンドな価値を提供しているトッププレイヤーを迎え、そのヒントを聞き出す対談連載。
第5回は、自然への敬意や生命の儚さ、生きる喜びをアート体験として表現し続ける大阪のレストラン「HAJIME」のオーナーシェフ、米田肇氏に唯一無二の価値の作り方、未来の食の可能性について聞いた(このトークの対談全編はこちら)。
山田:世界中からHAJIMEさんを訪れるハイエンド層は、どのような方々ですか?
米田:いろいろな方がいます。スーパーヨットで香港を出発して、「もうすぐ大阪湾」と連絡をくださる方もいれば、ヨーロッパから一人でお出でになり、うちの食事をしてそのままジェット機で帰る方もいます。
山田:すごいですね。みなさんどこでHAJIMEさんを知るのですか。
米田:友人に聞いているようです。情報が多すぎて選ぶのが難しいし、レストランのランキングは政治的な影響もあって、純粋に空間や料理の素晴らしさで決まっていないものも多い。だから口コミが一番信用できるということでしょう。
山田:飛び込みでいらしても、HAJIMEさんのような所はお席をいただけないのでは?
米田:一応そういうVIP用に置いてある席もあるんですよ。
山田:年齢層や職業はいかがですか?
米田:若い方から7、80代の方まで幅広く、きちっとした格好で来られる方も、Tシャツにジーンズみたいな方もいらっしゃいます。職業はほとんどわからないですね。一応、お名前を頂いたらサービスチームが検索をかけて、お顔とお名前が一致するようにしていますが、全く分からない方もいらっしゃいます。
山田:特に印象的だった方は?
米田:ピンク色のジャージーにナイキのスニーカーという姿でいらした中東のゲストです。玄関で「断りましょうか」となったんですがお受けすると、「すごい!」と喜んで帰られました。営業後には皆で「普通ジャージでくる?」と話していたのですが。
その数日後、中東の美術館の館長から「先日王妃と伺ったのですが……」と電話があって、聞くとジャージーの方が王妃だったのです。「王妃から『HAJIMEを持ってきて頂戴』と言われました。ヘリコプターを6台ぐらい用意しますので、紐でぶら下げて持っていくイメージです」と言うので、「それは難しい」とお断りすると、「一度王様にも料理を作ってほしい」と。その後中東の情勢が不安定になり、延期になってしまったんですけど。