中国はもはや米国にとって携帯電話の最大の輸入元ではない。米国勢調査局の貿易データを筆者が分析したところ、中国は少なくとも2002年1月以降、279カ月(23年3カ月)にわたり米国の携帯電話の輸入元として1位だったが、今年4月にその座をインドに明け渡した。
これは6年におよぶ米中貿易戦争の新たな節目と言える。
中国に対する貿易戦争はドナルド・トランプ米大統領が1期目の途中に始め、続くジョー・バイデン前大統領のもとでも若干強化されて続けられた。大統領に返り咲いたトランプは、中国製品に対する関税を計145%まで引き上げた。禁輸措置を課したに等しいこの高関税は、最近になってようやく30%まで引き下げられたものの、これでもなおとんでもなく高い水準だ。
貿易戦争の進行を示す印はほかにもいくつかある。
・中国はかつて米国の最大の貿易相手国だったが、いまではメキシコ、カナダに次ぐ3位に後退している
・中国はかつて米国の最大の輸入相手国だったが、いまでは米国の輸入は中国からよりもメキシコからのほうが多くなっている
・貿易戦争が始まった当初、米国の対中貿易赤字はほかのどの国に対する赤字よりも5倍以上大きかったが、いまではメキシコに対する赤字の1.5倍にまで縮小している(対中赤字が減少する一方、対メキシコ赤字が大幅に増加したことによる)
・米国の貿易全体に占める中国の割合は、過去22年で最も小さくなっている
・米国の対中輸出も大きな打撃を受けている(中国の習近平国家主席による報復関税が発動されたため)
それでも米国の貿易と貿易赤字は引き続き拡大している。これは主に、かつて中国から輸入していたいくつかの品目が、米国の近くに生産を移転する「ニアショアリング」の必要性が叫ばれているにもかかわらず、ほかのアジア諸国から輸入されるようになっているためだ。
そうした品目のひとつが携帯電話だ。
米国の携帯電話輸入元は今年4月、少なくとも2002年1月(筆者の依拠するデータではここまでしか遡れない)以降で初めてインドが1位になり、中国は2位に後退した。