オックスファムの報告書によれば、飢餓の危機はパレスチナ自治区に限らず世界で拍車がかかる見通しだ。穀物の22%をウクライナから輸入しているイエメンなど、ウクライナやロシアからの穀物輸入に頼る国でとくに深刻になるとみられている。イエメンでは約1620万人が食糧を満足に得られず、飢饉に似た状況が続いているにもかかわらず、イエメン向けの食糧配給は削減されている。
レバノンやチュニジア、エジプト、トルコ、シリア、アルジェリア、モロッコ、エチオピアといった国も穀物の調達でウクライナやロシアへの依存度が高い。エジプトではここ数週間で小麦価格が20%急騰し、自国からの小麦輸出を停止することが検討されている。ヨルダンも同様の措置を検討している。
このほか、ソマリアやシリア、スーダン、アフガニスタンなど、国内で最近武力紛争があった、あるいは現在も続いている国も食糧危機が深刻化しやすい状況にある。
最近は世界的に物価が上昇し、生活の苦しい世帯の購買力はさらに下がっている。その結果、こうした世帯が健康的な食べ物を十分に買うことはますます難しくなっている。
「生産や供給になんらかの混乱が生じれば価格は押し上げられ、何百万という脆弱な世帯、とりわけ飢餓が深刻な地域の世帯に影響をおよぼすおそれが出てくる」とWFPのカイル・ウィルキンソンは懸念する。ウィルキンソンによれば、中東・北アフリカ諸国は食糧を大量に輸入しているため、食糧価格上昇の影響をとくに受けやすい。
米NGO「憂慮する科学者同盟」のシニアサイエンティストで食糧・環境プログラムのディレクターを務めるリカード・サルバドールは「わたしたちが目の当たりにしているのは、グローバルな食糧・農業システムが混乱の影響をどれほど受けやすいか、そして、立場が弱く周縁に追いやられた人たちこそ、その影響をもろに受けやすいということだ」と述べている。
パレスチナ自治政府は小麦の備蓄に関するオックスファムの見方に同意しておらず、小麦粉の備蓄は3カ月はもつと主張している。住民に食糧がもっと行きわたるように、当局は小麦粉やパンについて一時的な免税措置も講じている。
一方、オックスファムのシャワは、ガザの状況は破滅的なものになりつつあると危機感をあらわにしている。「ガザでの活動は厳しさを増しています。人々の生活に実際どれほどの被害が出ているのか言葉で表すのは難しいですが、壊滅的です」