「小麦備蓄、あと3週間で枯渇」 パレスチナで深まる食糧危機

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ロシアによるウクライナ侵攻の余波で、世界各地で飢餓など食糧不安が高まるのはほぼ確実だろう。国際NGOのオックスファムによれば、そうした危機が身近に迫っているのがパレスチナ自治区だ。

オックスファムは今週、パレスチナ自治区の小麦備蓄は3週間で尽きるおそれがあると警鐘を鳴らした。ガザ地区では大半の家庭が食事の量を減らしたり、つけで食品を買ったりするようになっているという。

「連日、子どもを食べさせるために仕事探しやお金の工面に奔走している人に会います。ですが、この段階ではどうしようもありません」。オックスファムでガザの食糧安全保障担当の責任者を務めるナジラ・シャワは、現地の状況をそう説明している。

パレスチナ自治区を「炭鉱のカナリア」とみなすことも可能だろう。パレスチナ自治区は小麦の約95%を輸入に頼っており、約3分の1をウクライナ産が占める。しかし、小麦の輸出大国であるウクライナとロシアは戦争の影響で食糧の輸出が落ち込んでいる。

パレスチナ自治区向けの小麦の大半はイスラエル経由で運ばれてくるが、そのイスラエルも穀物の半分をウクライナから輸入している。パレスチナ自治区では、政府が食糧保管施設を保有していないため、域内の価格は市場の変動にいっそうさらされやすくなってもいる。

パレスチナ自治区では今回の戦争前から飢餓がはびこり、住民の約3分の1が必要な量の食糧を安定して得ることができない状態だった。国連世界食糧計画(WFP)は「長引く紛争や経済の停滞、貿易や資源利用の制限に、高い失業率や貧困率が重なり、引き続き深刻な問題になっている」と指摘している。

ウクライナでの戦争はそれに追い打ちをかけるかたちになった。オックスファムによると、パレスチナ自治区では今年、ガザ地区を中心に約210万人がなんらかの人道支援を必要とすることになりそうだという。ガザ地区ではもともと住民の6割超が食糧を満足に得られない状態にある。
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編集=江戸伸禎

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