キャリア・教育

2022.05.10 07:00

「子育て世界地図」。教育に最適な都市、東京の評価は?


「家のすぐそばに、オットー・シュピールプラッツという広い公園があります。先生もいて、子供が下校後に訪れると無料で宿題を手伝ってくれるんです」とオクサナは話す。ベルリン市内にはレゴランド以外に娯楽施設は見つからなかったものの、市街地から30分ほど離れると、ビーチや子供の公園や広い森林を備えたヴァンゼー湖水浴場があった。

ベルリンの人々は、子供のための新たな場所を積極的に開発している。2020年6月には、ベルリン・ユダヤ博物館に子供向けの別館「アノハ」が誕生した。この事業を進めたのは、米国の建築設計事務所オルソン・クンディグだ。1960年代に建てられた花の屋内市場(ガラスとコンクリート製の高層ビル)を改築したアノハは、すべて木製で丸みを帯びた2層構造で、その内装は「ノアの方舟」をモチーフにしている。

2016年に開催されたユダヤ人の子供向け博物館の建築コンクールで優勝したのが同事務所だ。審査員は選考理由をこう説明した。「ノアの方舟という主題からは、多様性、移住、創造性、やり直しの機会、新たな門出といった現代的なテーマが呼び起こされる。仮にノアが本館を訪れたら、このようなテーマをひとりまたは対話形式で再演してくれるだろう」。

この巨大な(2700平方メートル)方舟には動物の像が150頭収められている。ベルリンの会社キュービックス(Kubix)が、使用済みの消火ホースやロープ、鋤やスプーンなどを再利用して作った動物たちだ。

オルソン・クンディグの所長で事業担当者のアラン・マスキンは「ウォールペーパー」誌の取材に対し、「博物館を訪れた人からは、ベーグルのような形だと言われます。子供たちは、『ベーグル』の内側で動物を箱に積んで方舟に載せることで、動物を『救う』ことができます。設計にあたっては、子供たちの意見を取り入れました。私たちの案は、洪水のときに浮くような家の模型を作ることでした。しかし、観察するうちに子供自身がこの世界の問題にどう対処するかがわかり、そこから展示用の計画を練り上げていったのです」と答えた。

ベルリン・ユダヤ博物館はこのプロジェクトに344万ユーロと、展示会に211万ユーロの予算を割り当てている。

3. ロンドン(英国)




巨大な国際都市(「ロンドン教育報告書」によると、学生のうち半数は母語が英語ではない)であるロンドンは、大人には住みやすい都市だが子供にとってはそうでもない。ロンドンに住む家族は、子供が生まれると郊外へと引っ越すことが多い。そのほうが安全で住環境もいいからだ。

名高い私立学校の大半は、歴史的な中心地から離れたところにある。公営幼稚園では国から週30時間まで補償を受けられるものの、子供への個別対応を望む人は、私立幼稚園を探したほうがいい。

「すぐ近所に、生まれてからすぐに特別活動をほぼすべて利用できる施設があるんです。広い公園や緑地公園もありますよ。ロンドンでは子供向けのあらゆる活動ができますし、最高の教師も住んでいます」と、ロンドン在住で2児の母でもあるナタリア・スミスソン(Natalia Smithson)は話す。彼女の息子が通う私立学校は全日制で、授業料は年間2万2000ポンドだ(約31万円。課外活動、制服、修学旅行の費用は除く)。こういう学校のほうが教師も子供に厳しく対応してくれるし、教育レベルも高い、とナタリアは語る。

裕福な家庭の中には、さらに高額な全寮制の学校を選ぶ人もいる。子供の規律と自立心を育むとともに、親自身の時間を確保するためだ。「卒業後はロンドンから出て行く子が多いです。ロンドンには大学があまり多くないので。帰省するのもごく短期間ということが多く、実家に住み続けるとしたら経済的な理由くらいですね」
次ページ > 東京(日本)「ふじようちえん」

翻訳=加藤今日子 編集=石井節子

ForbesBrandVoice

人気記事