経済・社会

2022.03.25 11:30

コロナ規制撤廃のスウェーデン。現地邦人医師が見た「医療IT国」の実態

規制解除されたストックホルムの街を歩く人々(Photo by Atila Altuntas/Anadolu Agency via Getty Images)

規制解除されたストックホルムの街を歩く人々(Photo by Atila Altuntas/Anadolu Agency via Getty Images)

日本もようやく「まん延防止等重点措置」が解除されたが、スウェーデンでは既に2月9日に全ての規制が撤廃となった。街にはコロナ禍前の日常が戻ってきた。

2020年には大きな超過死亡を出したスウェーデンだが、2020年1月から2021年12月までの超過死亡予測では、ヨーロッパ諸国の中でも非常に低くなっている(図1、The Local)。ワクチン接種は2020年年末より、厳密な優先順位の下に進められた。最優先は介護施設や、自宅で要介護の高齢者。続いて、コロナ最前線で働く医療従事者や介護者である。ワクチン接種が進むにつれ、介護施設の感染者は減少していった。(図2、公衆衛生庁HP)

スウェーデンはこれまで4つの波を経験している。(図3、公衆衛生庁HP)2021年のデルタ株による第3波では、ワクチン接種がほぼ完了していた介護施設では、市中感染が拡大した際にも感染拡大が起こらなかったし(図4、3月3日記者会見スライド)、死亡者増加もなかった(図5、3月3日記者会見スライド)。


図1


図2


図3

2021年年末からオミクロン株の感染拡大が始まったが、それに先んじて、同じ優先順位でブースター接種が始まっていた。オミクロン株ではブレークスルー感染が当たり前であるため、介護施設でも感染は拡大し(図4)死亡者も増加した(図5)。


図4


図5

しかしながら、感染者数は非常に多かったにも関わらず、以前の波と比べると、重症者や死亡者の増加は低く抑えられているため(図3)、ワクチン接種にはオミクロン株感染時の重症化予防効果があるとされている。しかし、感染頻度については、ワクチン接種者も未接種者も同様に感染しており(図6、公衆衛生庁HP)、オミクロン株に対する感染予防効果は弱い。


図6

ICU入室者については、人口当たりで見ると未接種者が多く重症化しICU治療を受けてきたが、ワクチン接種率が高いこともあり、実数ではワクチン接種者が多い(図7、公衆衛生庁HP)。


図7

例えば1000人の集団の80%、すなわち800人がワクチン接種済みで、その10%である80人が重症化したとする。未接種者の重症化率が接種者の重症化率の2倍、すなわち20%であれば、200人の未接種者のうち40名が重症化する。つまり、未接種者で重症化の頻度が高いにもかかわらず、実数では接種済みの人で重症化した人が多くなる。因みに、最近の死亡者数を見ても、ワクチン未接種者で死亡頻度が高いにもかかわらず(図8、公衆衛生庁HP)、死亡者実数ではワクチン接種者が多い(図9、公衆衛生庁HP)。いずれも、死亡者のほとんどが高齢者である。





図8


図9
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文=宮川 絢子

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