経済・社会

2022.03.25 11:30

コロナ規制撤廃のスウェーデン。現地邦人医師が見た「医療IT国」の実態

規制解除されたストックホルムの街を歩く人々(Photo by Atila Altuntas/Anadolu Agency via Getty Images)


ワクチンパスの運用はわずか2カ月。合唱団の練習もマスクなしで


オミクロン株の流行が収束する以前に規制撤廃が発表され、予定通り全ての規制撤廃がなされてから1カ月以上が経過する。ワクチンパスは2021年12月から100人以上のイベント入場の際に使用されたが、わずか2カ月の運用であった。規制撤廃後も継続して感染は収束へ向かっている。検査対象が限定されているため、感染者総数から多くを語ることはできないが、入院患者数、重症者数(図12、3月3日記者会見スライド)、死者数全てが減少しており、医療現場も平常の通常診療が行われている。また、主病名が新型コロナ感染症である率が低くなっているのもオミクロン株による第4波の特徴である(図13、社会庁HP)。
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図12


図13

病院では患者さんと接触する際にはマスクの着用が義務付けられているものの、患者さんがいない場合にはマスクなしの医療従事者は多い。街では屋外はもちろんのこと、屋内や公共交通機関内でもマスク姿を見ることはほとんどなくなった。

学校ではマスク着用となったことは一度もなく、子供達はコロナ禍を通して、ほぼ通常の学校生活を送ることができた。課外活動も継続されたものが多く、息子の合唱団の練習もマスクなしで行われてきた。子供達がコロナ禍でストレスをあまり感じることなく生活できたことは、親にとってとても有難いことであった。
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2022年4月から、スウェーデンでは新型コロナウイルスを社会に脅威を与える感染症との位置づけから外すことになっている。コロナ禍で世界的に有名となった国家疫学者テグネル氏はその職を辞し、WHOでワクチンプログラムに関する任務に着くとも言われている。パンデミック宣言以来、毎週行われた通算198回に及んだ省庁の定例記者会見も3月3日で終了となった。スウェーデンは既に、ウイルスと共存する社会を目指す新しいスタートを切っている。



宮川絢子(みやかわあやこ)◎スウェーデン・カロリンスカ大学病院・泌尿器外科勤務。平成元年慶應義塾大学医学部卒業。日本泌尿器科学会専門医、スウェーデン泌尿器科専門医、医学博士、カロリンスカ大学およびケンブリッジ大学でポスドク。2007年スウェーデン移住。スウェーデン人の夫との間に男女の双子がいる。

文=宮川 絢子

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