麹とコーヒーかすで目指す循環型経済、静岡発「ソーイ」の取り組み

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私たちが1年間に消費するコーヒーの量は、世界全体でおよそ1000万トンにのぼるという。そして、廃棄される「コーヒーかす」もまた、相当の量になる。

そのコーヒーかすを再利用し、カップや布地、印刷用のインク、バイオ燃料など、さまざまな製品を作り出そうという取り組みは、以前から続けられている。だが、コーヒーかすには水分が含まれており、再利用するには乾燥させる必要があることから、その過程で大量のCO2が排出されるという問題がある。

環境にダメージを与えることなく、コーヒーかすを再利用する方法はあるのだろうか──?静岡県に本社を置くソーイ(SOI)の石垣哲治CEOによれば、その答えはイエスだ。農学博士でもある同CEOが考案した「麹を使ってコーヒーかすをアップサイクルする」方法は、環境にマイナスの影響を与えることがないという。

「新たなおいしさ」を開発


ソーイは地元のカフェなどの協力を得て収集したコーヒーかすをペースト状にし(同社では「コーヒーベース」と呼んでいる)、醤油や酒など日本の伝統的な発酵食品に使われる麹で発酵させた食品を開発。およそ5カ月前、コーヒーバーの「COLEHA(コレハ)」を発売した。

1kgのコーヒーベースからは、115本のコレハを作ることができるという。そのコレハには、糖分ゼロから40%まで、甘さの異なる3種類がある。意外なほどのそのおいしさの裏にあるのは、「うまみ」だ。

うまみは味の基本である「甘味、塩味、酸味、苦味」に次ぐ第5の味とされている。麹菌は繁殖するときにさまざまな酵素を生産、それらがタンパク質を分解して、うまみ成分であるアミノ酸に変える。

ソーイによると、同社のコーヒーベースには、生のコーヒー豆のおよそ3倍のアミノ酸が含まれている。麹に含まれるタンパク質分解酵素(プロテアーゼ)が、コーヒーベースに豊かな味わいをもたらしたと考えられるという。

さらに、このコーヒーベースには、健康効果も期待できる。分析の結果、通常のコーヒーに比べ、健康増進に役立つポリフェノールが1.6倍、抗酸化物質が1.78倍含まれることが分かっている。
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翻訳=木内涼子

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