──外部との交流により、これまでどのような新たな発見がありましたか?
現在はコロナの影響もあって状況も少し変わってきましたが、以前パナソニックでは、オフィス内のお弁当サービス「totteMEAL」やおにぎり店運営支援サービス「OniRobot」を手掛けていました。
後者は元々、“美味しいおにぎりを握る”ことに着目してのスタートだったのですが、海外から見ると、おにぎりは完全食として捉えられていることがわかりました。また、顧客に課題やアイデアをぶつけてみると、「狭小型の店舗運営の方々の課題解決に繋がる」という気付きを得ることができました。
それらを踏まえて、おにぎりを握るロボットは開発せず、市販のロボットを活用し、オフィスのある東京・浜松町に「ONIGIRI GO」を出店。店舗運営もしていたのですが、どんなに狭小でもなかなかワンマン・オペレーションで回すことができないなど、見えてきた課題から徐々にサービス自体もピボットしていきました。
残念ながら、コロナの影響で2020年12月にプロジェクトを中断せざるをえませんでしたが、そこで得た知見を活かし、オーツミルクを家で簡単に作れるサービス「Earth MILK」プロジェクトを立ち上げました。
自宅で手作りオーツミルク「Earth MILK」(パナソニック提供)
オーツ麦を原料とした「Earth MILK」は、環境負荷が低く、サプライチェーンの透明性にもこだわった安心で安全なミルクを提供するサービスとして、2021年7月に東京・代官山にて店舗での実証実験を実施。現在、オンラインショップで販売しています。
──初めのアイデアに固執せず取り組んでいるのが印象的です。
ピボットのタイミングは常に課題です。時間をかけすぎて煮詰めてしまうより、「もっと世の中に対してこういうことができるのではないか」ということを目指して活動しています。
──事業化の撤退基準はどのように決めているのでしょうか?
ピボットもしていくので最初に決めるのは難しいですね。一方で低空飛行を続けることは、顧客にとってもプロジェクトを遂行する会社側にとっても不幸でしかありません。
実現できるか否かはフェーズ単位で見ています。その一つがビジネスコンテストとなります。事業推進を決定した後でも、事業検証というフェーズを経て、継続を判断しています。また、時間軸は大切で、いつまでに何をするか、それはできたのか、などを自分達で振り返るようにしています。
新規事業は、計画の立て方や見通しの制度が既存事業とまったく異なります。その分難しさもありますが、挑戦しがいもあります。いい面だけでなく、苦しい部分も理解しながら楽しく進められたらと思っています。