ビジネス

2022.04.15 08:30

ピボット、撤退、共創 パナソニックの新規事業の「ブレない軸」とは


──事業を進めるにあたってどのような体制をとっているのでしょうか。

2パターンあります。ビジネスコンテストの場合、勤務時間の25%を新規事業創出にあてられるよう、人事部門と話し合いのうえ仕組み化しています。検証テーマは事業開発センターで100%取り組めるようにしています。



パナソニックでは「リスクはないから外に出よう」という風土を醸成しています。ゲームチェンジャー・カタパルトのテーマとして、ビジネスコンテストのフェーズを経て事業部や事業開発センターで育てるパターンもあれば、シリコンバレーのScrum VenturesとINCJと共同出資で設立した事業支援会社BeeEdgeにて事業化するという道も設けています。

後者はパナソニックとして直近での事業化が難しいものを社外の枠組みで世に解き放つ仕組みになりますが、2018年に設立してから3件が事業化されています。創業者自ら出資できる権利もあって、まさしく会社を経営するということになります。会社の運命を握っている活動ですので、創業者達も日々ピリピリした状況でいます。

──事業化にあたり、共創というパターンもあるのでしょうか。

あります。数としては少ないですが、セルフメイドで発酵食を作ることができる「Ferment2.0 / Miso Ball Club」をマルコメさんと手掛けたりしたこともありました。

共創を生むための活動は日々行っています。自社と異なる領域は当然知らないことばかりなので、時間をかけて対話することが多いですね。コミュニケーションをとるなかで「実はこの課題は両社の領域に関わっている」といった気付きもあります。

──共創相手はどのように探して決めているのでしょうか。

スタートアップを含め、一般的なデータベースや紹介、VC経由やオファーなどさまざまです。この2年ほどはオンラインが中心ですが、基本的に直接話すようにします。我々が事業をつくる重点領域を決めていることもあって、お会いする相手はそちらに関係する方が優先的にはなります。関係事業部交えて追加で話をすることもありますが、その後もうまくいくかは別問題です。今のところコンバージョンは決して高いとは言えない状況です。


(c) Adobe Stock

共創するにあたって大事にしているのは、「共に成長できるか」という点です。どちらかの都合に走ってしまうと、一時的な取り組みはできても長続きしません。最終的に社会課題や顧客課題をどのように解決するか、そのために最もふさわしいパートナーはどこかを考えています。

顧客課題の大きさや解決の優先順位を見て検討していることもあって出資まで至ったケースはまだありませんが、一緒に課題を見つけていける方々と継続した関係を築いていきたいと思っています。
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文=佐藤奈津紀

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