ビジネス

2022.04.15 08:30

ピボット、撤退、共創 パナソニックの新規事業の「ブレない軸」とは

鈴木 奈央

──新規事業の立ち上げにおいて、既存事業との兼ね合いやカニバリについてどのように捉えているのでしょうか。

カニバリは自社からの視点で、顧客の課題解決とは関係のない話です。見方を変えると、顧客の課題を解決するための方法が変わったということ。違う形で自分達の事業が強くなると捉えています。

弊社のビジネスコンテストはパナソニックの社員であれば誰でもエントリーできますが、課題があると感じている現場のメンバーが「自分のテーマ」としてコンテストの場を活用し、最終的に幹部等に通しています。その頃には視座が上がっている状態ですし、経営陣も経営層の視点として、カニバリよりも「これはやるべきかどうか」と判断を下していると思います。

──既存事業に携わる人の中には、売上を担保するまで時間のかかる新規事業へのちょっとした対抗心があるという声も聞きます。



最終的には事業に新規も既存もありません。ある時間軸を見た際の一点のスナップショットにすぎません。やはり大切なのは顧客です。パナソニックの場合、「こんな課題を持っている」という部分に対しては誰も反対しません。ソリューションを捉える事業であれば視点が必然的に上がっていくと思います。

──ゲームチェンジャー・カタパルトの取り組みは社内にどのような影響を与えていると思いますか。

ゲームチェンジャー・カタパルトは、事業を創り出すことが大きな役割ですが、それ以外にも、社内に挑戦する風土を醸成させる役割を担っています。過去、応募したメンバーの周りが次の開催時に続いて応募していたことがあります。そうして知らず知らずのうちに熱が周りにも伝わって火がついていくのかなと思います。

もちろん、僕ら自身も燃え尽きるくらいの志を持ちながら自らを信じて事業創出に取り組んでいます。カタパルトを通じてメンバー自体が燃える姿を見せることで、周りに火を移せていければいいですね。

──今後、どのような姿を目指していますか?

事業体制における先鋭化を考えると、新規事業創出も一つの手段にすぎません。既存から事業が生まれても素晴らしいことです。事業開発における先鋭化は、新規事業をつくるという表面的な目的ではありません。根底にあるのは社会課題や顧客課題の解決です。既存事業のアセットと組むのか、オープンイノベーションを通じて周囲の力を得て取り組むのがいいかの違いでしかありません。


コロナの影響で1年半ぶりに集まったという部署のメンバーと(パナソニック提供)

事業を立ち上げるにあたって色々な落とし穴があります。テクニカルなノウハウはしっかりフィードバックして仕組みに落としていくことを含めて、事業を生み出すような専門集団になっていきたいと思っています。

最終的に、どの部門や企業に属しているのか、どこの地域にいるのかといった括りなく皆がカタパリストになって、自発的に胸の中に一ネタを持ったり、誰かのネタのフォロワーになっていったりする、そんな集団になれたらいいですね。ゲームチェンジャー・カタパルトを推進する組織の存在意義がなくなって文化になるくらいのところまで到達することを理想としています。

文=佐藤奈津紀

タグ:

ForbesBrandVoice

人気記事