ただ、こうした逆境での環境下でこそ新しいアイデアが生まれてくるのも事実だ。
今、テクノロジーの領域、とくにシリコンバレーにおいてはどのような動きが目立っているのか? 米国で破壊的テクノロジーやコンシューマー・テクノロジー、そしてデジタル革新に詳しいKaleido Insights共同創業者、Jeremiah Owyang氏に話を聞いた。
暗号通貨とソーシャルメディアが融合
「まず頭に浮かぶのは、Creator’s Coinの勃興です。ここしばらくは仮想通貨の市場が盛り上がっていますが、昨年夏頃から、そこにソーシャルメディアが融合した新たなコミュニティとしてのCreator’s Coinの動きが顕著です。コロナ禍でお金が手元に余っていた人達はその使い道を探していたようで、この領域に資産を投入しています」
こう語るOwyang氏は、Creator’s Coinを展開するシリコンバレーのスタートアップ「Rally」の経営に関わり、かつサービスも利用している。
仮想通貨と言えば投機目的のイメージが強いが、クリエイターやインフルエンサーが大切なファンやフォロアーとのコミュニティを創り上り、自ら管理していく新たな仕組みとしても注目されている。
「アーティストやクリエイターは、Rally上で独自のコインを発行、それに連動するコミュニティを創ることができ、ユーザーは応援したいアーティストのコインを購入することでコミュニティに参加し、プライベートライブを鑑賞したり、未公開作品を楽しめたりという特典が得られます。
仮に15年前、『マネタイズできるコミュニティを自前で持てる』と言っても誰も真剣に受け止めなかったでしょう。ですが、今や一人ひとりがそのようなプラットフォームを持つ環境と仕組みができあがりつつあります。これは正にMicro Economy(≒ミクロ経済商圏)を自ら構築できるということなのです」
一見、オウンドメディアやソーシャルプラットフォームでもやろうと思えば可能なように見えるが、大きな落とし穴がある。それは、既存のプラットフォームでは運営側に管理権限が与えられているという点だ。
昨年の米大統領選挙中、トランプ前大統領のフェイスブックやツイッターが閉鎖されたのは、プラットフォーム側の論理や価値観に沿わなかったためだ。一国の大統領のアカウントとて、そのような制裁がくだされてしまう。