「アーティストたちの活動も同様です。昨年のコロナ禍以降、コンサートやライブができなくなり、SNSを使って有料や有料のストリーミングが増えましたが、それもプラットフォームの管理下にあります。
言わずもがな、ライブ配信等を行えば、収益のうちの一定割合がプラットフォーム側に支払われます。さらには、極端な例ですが、政治的なメッセージ色の濃い歌詞でも披露すれば、たちまち配信できなくなったりすることもあります。無論、こうした管理体制がなければ悪用されるというリスクもありますが」
では、今までの仮想通貨とCreator’s Coinは何が違うのか? Owyang氏は、10年、15年前と最も違う点として、ITインフラやステークホールダーといったエコシステムの変化を指摘する。
「既存経済の主体が受け入れ始めたのは大きな変化です。大手銀行やペイパルといったマーケットのメインプレーヤーが仮想通貨の受け入れを表明しています。わかりやすい例では、テスラがビットコインによる決済を決めました(その後、環境問題を理由に撤回)。ITインフラ・テクノロジーがここ数年で急速に整備され始めています」
それを裏付けるのが、「Creator’s Economy」の活況だ。コンテンツやメディアをゼロから立ち上げ情報やコンテンツを発信し、自らインフルエンサーとなっていく動きは、自粛を強いられたコロナ禍でさらに加速した。
「アジアの一部の国では、そうしたインフルエンサーを『KOL(=Key Opinion Leader)』と称しています。米国では、おもちゃのレビューをするYouTubeサイトを立ち上げ、2000万ドルもの年間売上を達成している子供も話題となりました」
クリエーター関連の新興企業への主な投資額の推移。米CBInsights社「The Creator Economy Explained(2021年6月)」に基づき筆者が引用し作成。(*)2021年6月4日現在
こうした動きに既存のプラットフォームも黙っていない。フェイスブックのマーク・ザッカーバーグCEOは7月、2022年までに同社のプラットフォームを活用するクリエイターに対して10億米ドルを投資すると発表した。
フェイスブックの具体的な取り組みは次の通りだ。
・同社の利用規約にクリエイターにとって不利とならないような収益化要件を準備検討
・フェイスブック上でコンテンツを創るクリエイターへの投資の実施
・フェイスブック上ツールの使用を通じて一定のマイルストーンに到達したクリエイターに新たなボーナス・インセンティブ・プログラムの提供
写真提供:JOHN G. MABANGLO/EPA/Shutterstock