YouTubeもTikTokもこぞって「自分達こそCreator’s Economyを積極的に支援するプラットフォームだ」と主張し始めているが、Owyang氏は本質的にこうした既存プラットフォームこそCreator’s Economyにふさわしくない存在であると見る。
「時流に乗ることは大手企業の経営戦略の基本です。ただクリエーターやインフルエンサーをはじめとするユーザーが最も嫌うのは、こうしたメガプラットフォームの“束縛”です。現に彼らは突然アカウントを停止したり、ユーザーアカウントのフォロアーを背後で遮断したり制限をかけたり、Black Listing・Shadow-Manningと呼ばれる行為を行なっています」
「力の不均衡が存在していて、ユーザー側が完全に劣勢を強いられていました。そこで、新たなマネタイズ手段を模索し続けていた多くのクリエーターにとって、Creator’s Coinが一つの解決策と考えられ始めたのです。ビジネスとして、ユーザーに力を移転させようとしています。『Decentralized Finance(分散型金融)』という言葉も定着し始めていますよね。これから世界中で起きていくと思われます」
グラミー賞受賞アーティストも注目するCreator’s Coin
Rally.io社ウェブサイト
Creator’s Coinで最も知られているのが、「Rally」を運営する米国サンフランシスコのRally Networks, Inc.だ。
2018年にKevin Chou氏らが創業した同社は、5700万ドル(約60億円)を、ICO(イニシャル・コイン・オファーリング)にて調達。出資者には、マーク・アンドリーセン率いるa16z(旧Andressen Horowitz)やAltos Ventures、Sparks Labなどの有力VC、Coinbase、Twitch創業者のKevin Linといった錚々たる面子が揃う。
Owyang氏はRallyで自身のメディアサイトを有し、自らの講演ストリーミングのコンテンツやプロフェッショナル・サービスを提供している。Rally上にはサッカー元日本代表の本田圭佑氏のページも存在する。
Rally.ioページにて展開しているJeremiah Owyang氏のページ(左)、本田圭佑氏のページ(右)
Rallyに限らず、今や著名な人物やアーティストといったクリエイターからブランドに至るまでCreator’s Coinを利用し出始めている。グラミー賞受賞歴のあるロックバンド「Portugal. The Man」も今年Creator’s Coinを利用したサイトを立ち上げた。彼らは自分達とファンとの関係を大切にしながらコミュニティを構築する手段として可能性を見出そうとしている。
アーティストのなかには、旧来のファンクラブのようにごく一部のファン層だけが得をする、あるいは権限を有するような仕組みはどこか違和感を感じていたケースも少なくない。