ビジネス

2022.03.25 07:30

希望を、インパクトを、未来へ届ける。起業家たちが挑む「新しい社会づくり」

(左から)笠原健治・山田進太郎・宮城治男


山田:宮城さんに出会ったころから、私には人もお金もサステナブル(持続可能)なNPOをつくって多様な生き方や働き方を後押しし、社会的インパクトを生み出したいという思いがありました。でも、社会を大きく変えるには影響力やお金も必要だと思ったので、まずはビジネスの世界で挑戦しようと考えてスタートアップの世界に入ったのです。
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そして、七転八倒しながら13年に創業したのがメルカリでした。18年には株式公開をして、気づけばそれなりに資産が膨れ上がってきた。そこでふと、「このお金はどう使えばいいのだろうか」と考え始めたのです。それで宮城さんや笠原さんにお声がけして、NPO業界の現状や基金設立の経緯などをいろいろ教えてもらいました。

笠原:ミクシィも非営利の世界については素人なので、みてね基金も構想段階からETIC.に相談しました。みてね基金の事務局は社内の有志とETIC.のスタッフでつくりました。ETIC.のことは元々よく知っているし、宮城さんに対する信頼も大きい。結果的に、ETIC.とミクシィのいいコラボレーションになっていると思います。

ETIC.
自らの意志と行動で社会の課題を解決する起業家型リーダーの育成や、リーダーを育む社会基盤の構築を目指して活動するNPO法人。1993年に、当時大学生だった宮城治男がETIC.の前身となる学生団体を設立。97年にNPO事業体へ移行し、日本初の長期実践型インターンシッププログラムを開始。2000年にNPO法人の認証を取得し、日本初のソーシャルベンチャープランコンテストや創業期のハンズオン支援事業、地域プロデューサーたちの協働・相互支援プラットフォームなどを次々に手掛けてきた。22年3月時点で、ETIC.の実践型インターンシップや起業支援プログラムへの参加を経て起業した人の数は1800人以上にのぼる。国や地方自治体との協働も多く、自治体間の広域連携や民間連携を推進する協議会の立ち上げや、休眠預金等活用法に基づく資金分配団体として「子どもの未来のための協働促進助成事業」を実施するなど、多様なセクターを巻き込みながら社会的なインパクトの創出を後押しする。
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非営利領域でイノベーションを


笠原:「なぜ、会社ではなく個人で基金を立ち上げたのですか」と聞かれることがあるのですが、理由のひとつとして、より不確実で挑戦的な取り組みへの投資が可能なことが挙げられます。

みてね基金の第二期では「イノベーション助成」という枠組みを設けました。革新的な解決策のアイデアと実行力をもつ団体に対して、より大きな金額を助成するものです。スタートアップ界隈では、投資を通じて挑戦を応援することが一般的に行われています。イノベーション助成はエンジェル投資に似た感覚で取り組んでいます。

山田:それは本当に重要ですよね。リターンが不確実ななかで、イノベーションに対してまとまったお金を出すことは、国や自治体にはなかなかできない。みてね基金のようにフレキシブルにお金を出す仕組みが増えれば、非営利のセクターにもイノベーションが起こると思います。

笠原:もうひとつの理由はシンプルで、個人で原資を出したほうが柔軟かつ機動的に意思決定ができるからです。特にコロナ禍では、一刻も早く支援を始めたかった。それには基金という選択肢がベストだと思いました。

宮城:ETIC.は行政事業の後方支援もしていますが、行政だとどうしても助成先に制約があったり、手続きに手間や時間がかかったりします。そうしたなかで、みてね基金のように民間で柔軟かつスピーディに資金を提供する仕組みがあると、実は行政のお金も効果的に使うことができます。

例えば、みてね基金が手がけている領域は本来、行政がカバーすべき分野と言えます。ここに民間の資金が入ることで、NPOや団体は行政から助成を受けるまでの期間をしのいだり、助成を受けるための準備を進めたりすることができます。民間と行政が組み合わさるとレバレッジが効くし、より豊かな支え方ができるのです。
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文=瀬戸久美子 写真=ヤン・ブース スタイリング=堀口和貢 ヘアメイク=内藤あゆみ

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