ヘルスケア、ウェルネスを経て。ビジネスにウェルビーイング視点を

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昨今、いろいろな機会で目にすることも増えてきた「ウェルビーイング」という言葉。意味合いとしては、これからの時代・社会における新しい幸せの形として用いられることが多いように見受けられます。

「ウェルビーイング」とは、直訳すると「幸福」「健康」という意味があります。その定義においてよく引用されるのが、世界保健機関(WHO)憲章の前文の一節です。

“Health is a state of complete physical, mental and social well-being and not merely the absence of disease or infirmity.”

日本WHO協会仮訳によると、「健康とは、病気ではないとか、弱っていないということではなく、肉体的にも、精神的にも、そして社会的にも、すべてが満たされた状態にあること」となります。

初めてこの言葉が言及されたのは、1946年のWHO設立の際に考案された憲章。WHO設立者の1人である施思明(スーミン・スー)が、予防医学(病気の予防・治療)だけでなく、健康の促進の重要性を提唱し、“健康”を機関名や憲章に取り入れるよう提案しました。

ウェルビーイングは短期的・瞬間的な幸せや喜びを意味する「Happiness」や「Joy」とも異なり、人生にわたる長期的な幸せの実現を意味しています。さらに、ウェルビーイングには、個人のウェルビーイングもあれば、地域・コミュニティ全体としてのウェルビーイング、社会全体としてのウェルビーイングもあります。

ヘルスケア、ウェルネス、ウェルビーイング


私は、新卒で入社した味の素という会社で食と健康というテーマに携わり、ビジネスキャリアをスタートしました。当時、ダイエットコークなどのゼロカロリー飲料に広く使われていたアスパルテームという低カロリー甘味料を原材料として、飲料やヨーグルトなどの低カロリーコンセプト製品を日本のさまざまな食品メーカーと共同開発する担当をしていました。

その後、虫歯予防効果のある甘味料であるキシリトールを、日本を含むアジア市場に導入するためにフィンランドの食品原料メーカーに移り、アジアのマーケティング責任者として15年間、多くの企業とヘルスケアコンセプトの製品開発に携わりました。

2007年にそれらの経験とネットワークを提供するコンサルティング会社、インテグレートを設立。長らく人々の健康にかかわる多くのプロジェクトに携わってきましたが、健康維持という意味では、それらを「ヘルスケア」、あるいは「ウェルネス」という概念としてとらえてきました。

ヘルスケアとは主に体の健康を保つというアプローチ、一方ウェルネスとは、精神的健康を含めたやや広い健康ケアのアプローチとして自分なりに理解していました。
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文=藤田康人

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