キャリア・教育

2022.03.08 07:30

ウェルビーイングを事業目的に掲げ、丸井取締役に就任した「医師」の信念

丸井グループ 取締役執行役員CWO(Chief Well-being Officer) ウェルネス推進部長 小島玲子

丸井グループ 取締役執行役員CWO(Chief Well-being Officer) ウェルネス推進部長 小島玲子

3月8日の「国際女性デー」にちなんで、Forbes JAPANが実施した「WOMEN AWARD 2021」の受賞者インタビューを特別掲載。

本アワードで「インクルージョン賞」を受賞したのは、丸井グループの専属産業医にして取締役の小島玲子。産業医の一部上場企業における取締役就任は日本初で、ウェルビーイング経営の旗振り役として活躍が期待されている。


40歳までは「男性ならもっと仕事がしやすいんだろうな」と思っていた


「働く人の健康を支えたい」と望んで就いた産業医の仕事。

だが、世の中では、産業医は不調者対応をする医師という“病気対応屋”のイメージが強い。そのことが、小島玲子には気になっていた。

医学部では、多くの時間を、人間の心身がいかに機能するかを学ぶことに費やす。どんな人でも睡眠不足だと仕事の能力が落ちるように、心身を整えてイキイキ働くための知見を、医師はもっている。

「あらためて産業医の存在意義を考え、医師というバックグラウンドを活かして、働く人一人ひとりの活力の向上と、組織の発展に貢献したいと思いました」

人と組織の活性化を研究するため、常勤産業医として勤務しながら大学院へ行き、その後丸井グループへ。

着任当初、会議での産業医講話の時間が出席者の居眠り時間になっていたと知ると、事業所別の肥満度ランキングなど関心をひくコンテンツを提示し、健康とその先にあるウェルビーイングへの興味をかき立てた。

産業医としての法定業務をこなしながら、新たな価値の提供にも取り組んだ。社員の手揚げによる全社横断プロジェクトを主催し、役員・管理職などトップ層向けのプログラムを軌道に乗せ、ウェルビーイングに賛同する仲間を増やしていった。

こうした活動が、経営戦略の柱にウェルネス経営を掲げる職場の取締役への抜擢にもつながった。


2021年9月30日に実施された、日本最大規模の女性アワード「WOMEN AWARD 2021」授賞式の模様。左から、Forbes JAPAN 編集長・藤吉雅春、丸井グループ取締役執行役員CWOの小島玲子(インクルージョン賞受賞)、EY新日本有限責任監査法人理事長の片倉正美(ブレイクスルー賞受賞)、モデルの海音(バリュークリエイター賞受賞)、富士電機発電プラント事業本部の武藤寿枝(イニシアティブ賞受賞)、本アワードを共催するLiB代表取締役社長・松本洋介。

年齢を重ねることでも、働きやすくなってきたという。

「産業医は管理職級の方と話すことも多いので、40歳になるまでは、男性ならもっと仕事がしやすいんだろうなと思うこともありました」

そうした気分にさせるのは“若い女性とはこういうもの”という既成概念があるからだろう。

ロールモデルはいなかった。しかし最近は“女性産業医のロールモデルになってほしい”と言われることが増えている。

「そうなれば喜びですね。私を全部まねる必要はないけれど、周りから言われる通りでなくてもいいんだよとは伝えたい。目指したい世界は何なのか、そこにどんな貢献ができるのか、自分の頭で考えることが、心の燃料になると思います。ロールモデルに足る人間になっていきたいです」


こじま・れいこ◎医師。大手メーカー専属産業医として約10年間勤務。2006年より人と組織の活性化について研究するため、北里大学大学院医療系研究科に在籍。10年、医学博士号取得。11年、丸井グループの専属産業医となり、同社の健康経営の推進役となる。19年執行役員、21年6月より現職。共著に『職場面接ストラテジー』など。

文=フォーブス ジャパン編集部 写真=吉澤健太

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