プーチンをサイコパスと診断できる根拠と陰性感情

Getty Images


いっぽうで、大統領就任後はKGBドイツ時代の人脈も利用し、ロシアの勢力拡大に走った。そのためには、おそらく北方領土で譲歩する気もないのに、日本の安倍首相(当時)の誕生日を記憶し、電話もかけている。

これは親愛の情などではなく、自分の利益完遂のためなら体裁は構わないサイコパスの特徴が表れていると私は考える。サイコパスは良心の呵責を持ち合わせず、嘘も平気だ。部下を持ち上げておいて後から責める「クラッシャー上司」と同系の行動だろう。

「週刊文春」3月10日号に、プーチン氏公認の伝記作者が「裏切りこそがプーチンの世界観の中心テーマ」と語ったとあるが、サイコパスの本質を突いた表現だと思う。

また前述の同書、中野信子氏『サイコパス』にはとくに興味深いこんな記述もがある。

「米国の社会心理学者ジョナサン・ハイト氏が道徳心を5つに分類した。

1. 他人に危害を加えない 2. フェアな関係を重視 3. 共同体への帰属、忠誠 4. 権威を尊重する 5. 神聖さ、清純さを大切に思う

サイコパスが極端に低かったのが、1と2だった。残りは意外にも高得点。その理由は、3~5は持っている方が生存戦略として合理的という解釈だ。反社会的勢力やブラック企業の経営者を考えた時、首肯できるものがありはしないか。翻って、ロシアの指導者は〜(後略)」

注意すべき点がある。サイコパスは人間的な感情が欠落しているとされるが、「妬(ねた)み」の感情はある。ただし、それとて自分の損得と関係ないことには無関心な点だ。

「サイコパスも『こいつは自分の仲間だ』と認めた人間に対しては『たとえ自分の損になっても人のためになる』ことをします。仲間が得をすると、自分も間接的に得をすることを知っているから」(同書より)

サイコパスは自分が所有していると思う物が奪われた時に陰性感情を抱き、罰を受ける可能性を顧みずに果敢に奪うための行動を起こすという。ウクライナ侵攻にそのまま当てはまるのではないか。

もし、私の仮説通りプーチン氏が「サイコパス」なら、他国の指導者たちは現行政策を再考する必要がある。

ではどうしたらいいのか?

サイコパスにつける「薬」はあるか


サイコパスの人たちへの治療法はいろいろ試みられてきたが、改善につながる決定的方法はほとんどない。

英国の心理学者エイドリアン・レイン氏によると、簡単な学習課題で間違えた時に罰として電気ショックを与えると、サイコパスは一般人より習得に時間がかかった。一方、正解時には電気ショックの回避だけでなく金銭的な見返りを与えると、サイコパスは一般人より習得が早いという結果が得られた。

これを直ちにウクライナ侵攻に当てはめるわけにはいかない。「盗っ人に追い銭」を思い浮かべるのが通常の感覚とは思うが、相手はなにせ「サイコパス」。そこを勘定に入れずに感情に流されると、人類の未来を左右するかもしれないと指摘したい。

プーチン大統領は公式にはバッハ、モーツァルト、ラフマニノフなどを聴くと発言しているが、一番好きなのはシャンソンやロシアのロックバンド「リュベ」、ジプシー音楽などだという情報もある。

心の旋律を簡単には読めないのがサイコパスの特徴だ。

お気に入りのレストランにはロシア料理だけでなく、ウクライナ料理も入っているという。ボルシチは本来ウクライナ料理。ロシア料理との「差」をどう感じているのだろう。

文=小出将則

タグ:

連載

Updates:ウクライナ情勢

ForbesBrandVoice

人気記事