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2022.03.04 14:30

八王子を国際モデル都市へ 北原国際病院グループの挑戦


「現在の医療は人が病気になるのを待って初めて利益が出せる、といった本来あってはいけないビジネスモデルになってしまっていますが、医療の目的は、すべての人が健康で楽しく幸せに暮らすのを手助けすることにあるはずです。もしもブルーゾーンにおいて、そこに住む人々が本当に病院なしでも健康に長生きし、幸せを謳歌しているというなら、医療の本当の役割は、世界中にブルーゾーンのような社会を生み出すことにあるのではないでしょうか」

北原理事長が語るのは、「どんな医療を行うか」より「どんな社会をデザインするか」に力点を置いているということだ。

「しかしながら、実際の社会を根底で支えているのは医療以前の『第一次産業』『教育』『司法』。安全な衣食住や、他者を傷つけることの非を説く、教育、司法が確立していない社会において医療など何の意味も持たないことを考えてみれば、我々医療者がプロとして医療を提供しようとするなら、先ず、安全安心平和な社会の建設に務めなければならないのは当たり前のことです。

そんな考えから、『ワンヘルス』と『スモール・イズ・ビューティフル』という二つの概念を基本に据えて、あるべき社会をデザインし、それを形にすることを使命にしようとしています」

「ワンヘルス」と「スモール・イズ・ビューティフル」


「ワンヘルス」は、この地球上にあるすべてのものは、地球それ自体も含めて全て生きていて1つに繋がっており、他者の犠牲や不幸の上に成り立つ幸せなどあるはずがない、という考え方。

「貧困に苦しむ人々に目を向けなければ、やがて治安の悪化や感染拡大が自分たちを襲う結果になります。卵を産む道具のような扱いを受けている鶏の苦しみに思いを馳せなければ鳥インフルエンザが蔓延し、それが他の家畜を介して人間にも広がり第2のスペイン風邪になりかねません。資源をむさぼり、乱開発によって地球を傷め続ければ、ホメオスタシスによって元に戻ろうとする地球の力が自然災害となって我々に跳ね返ってきます」

このように、医療者は、社会や自然について総合的に理解し、人や物が可能な限りお互いに傷つけあうことのない社会を目指すことによって、はじめて医療本来の目的を果たせるはず、と北原理事長は考える。

「スモール・イズ・ビューティフル」とは、経済学者のエルンスト・フリードリッヒ・シューマッハーが提唱した考え方だ。

「シューマッハーは、『人口50万人を超える社会を正しく維持することは難しい』と語っていますが、人口60万の八王子市を本拠地とする私も正にその通りと同意します。

今、人々は傷つくのを恐れ、猥雑な社会に対して心を閉ざしています。恐らくそれが他者の尊厳を見失わせて収奪行為を横行させ、社会崩壊を引き起こしている原因であり、この状況から抜け出すためには、老若男女を問わずなるべく多くの人に安全安心心地よいと感じてもらえる環境を作り出し、その中で可能な限り周囲に心を開き、世界に対する信頼を取り戻してもらうしかありません」
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取材・文=中村麻美

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